千早茜 「透明な夜の香り」
タイトルと表紙が気になって買ってみました。初めて読む作家さんです。
主人公は調香師の住む屋敷に務めることになった女性。彼は香りに関する天才であらゆる香りの作成だけでなく、匂いから相手の感情や体の状態、行動を読み取ることが出来る。亡くなった人を忘れないためにその人の香りを求める人、行方不明になった子供を匂いを頼りに探してほしいなど様々な依頼がやってくる、というお話
香りと人の感情をテーマにした作品です。
人間が香りをどう認識しているのか、匂いと感情がどう結びついているかなどを綺麗に表現している作品でした。匂いを求めてくる人々の心の奥底に何が隠れているのか?を匂いで紐解いていく描写はほかの作品にはない華やかさでした。香りは気持ちを落ち着けたりするだけでなく、その匂いから記憶や感情を引き起こすことがあると作中では解説されていました。特定の場面を見てトラウマが呼び起こされるというのはよく聞きますが、匂いでも同じようなことが起こせるとのことです。
「嘘は、におう」と帯に書かれていたのでミステリー系なのかと思っていたのですがそれっぽさはあまりありませんでした。作中を通してドラマを見ているかのような雰囲気になっています。
題材が目新しく雰囲気も綺麗で話も読みやすいので手軽に読める作品を探している方はぜひ読んでみてください。