花の本棚

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白井智之 死体の汁を啜れ

白井智之 「死体の汁を啜れ」
白井さんの作品で面白そうなものを見つけたので読んでみました。

 

 
どの事件も遺体に猟奇的な特徴がありしがない推理作家が真相を探るという短編集になっています。猟奇殺人のはずなのですが作品の雰囲気が全体的にコミカルに出来ているため、グロテスクな感じがあまりせず読みやすいです。
ミステリーとしてみると各章の事件の謎は手短ながらも質が高いので自分で考えて解いても面白いと思います。各事件の状況からどうやったら殺害できるかを考えるという閃きの要素が強い内容なので謎解きみたいで楽しいでしょう。
 
作中にて登場人物の推理作家が「ミステリーは誰でも人を殺せる前提だから成り立っている」という話をするシーンがありました。殺人とは体格もよくて凶行に耐えられる強靭な精神をもっていないとだめなので、現実的にすると登場人物全員屈強な人になってしまうという意見でした。
この考え方は面白いなと思いました。人里離れた屋敷に閉じ込められた、なんてシチュエーションでその場で殺人事件を起こそうとしたら体格だけで犯人絞れてしまうという感じでしょうか。体格を考慮しない殺人だけにしようとしたら凶器が薬品くらいしか残らないのでものすごく地味なミステリー作品になるでしょうね。
 
タイトルは不気味な感じですが内容は読みやすいので気になる方は気軽に手に取ってみてください。