方丈貴恵 「名探偵に甘美なる死を」
このシリーズの過去2作が面白かったので3作目を買ってみました。
主人公の男性はVRゲーム開発会社からのゲームイベントに参加する依頼を受けた。この会社が開発したVRミステリゲーム内で彼が犯人役となって殺人事件を起こし、招待された他の探偵たちが推理できるか勝負するというイベントであった。
しかし当日、招待された探偵たちはVR内と現実で起きる殺人事件を解けなければ死ぬというデスゲームをさせられることになる。主人公はVR側で犯人役を継続するため、VR側の犯行が見破られても死ぬことになるという苦境に立たされる。VR内で犯行を成功させつつ主催者が送り込んだ現実側の事件の犯人を推理する、というお話。
特殊設定系のミステリー作品となります。
本作はVR側の特殊設定と現実の事件の組み合わせ方が非常に上手い点が見所となります。VR側の事件はゲーム内の設定があるため特殊設定の中での推理をすることになり、その一方で現実側の事件は特殊設定なしの推理が必要になります。この二つの異なる状況の使い方が非常に上手くて面白い。またVR側の事件も犯行シーンは描いていないので主人公が起こした事件も推理することが出来るので、両方の推理に挑戦するのも良いでしょう。
シリーズ物の3作目ではありますがミステリー部分には関係ないので前作は読んでいなくてもOKです。ただ前2作を読んでいると楽しめる部分もあるため、ちゃんと楽しみたいという方は前2作を先に読んでおくと良いです。
作中にて「探偵は事件解決を名目に何をしても良い存在」であり、それを当然としている探偵たちを許せないという考え方について書かれていました。
現実で探偵が殺人事件を推理する場面に出くわすことはありませんが、緊急事態に対処するために横暴な振る舞いをすることを許せるか?であれば現実にもある話なので考えてみました。
私は許さない側です。「緊急事態」をひとまず私の私生活や仕事で起こる範囲内として考えると、私が許さない行為の中で「緊急事態だから」を理由に許せるものが一つもないからです。これは私の人間性によるものですが、状況や機嫌、相手などによって物事の価値を変動させるような面倒くさい人間になりたくないと考えています。こういった考えなので「緊急事態」は私の価値観を変える条件にはなりません。
自分がこういった考えなので、仮に緊急事態で横暴なことを私がしたときもそれを言い訳にして許してもらう気はありません。その当時の状況で自分が考え、ベストだと決断した行為に後から言い訳やケチをつけるのは見苦しい、というのが私のポリシーです、
方丈さんの特殊設定系のミステリーは面白い作品が多いので、気になる方はチェックしてみてください。