花の本棚

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下村敦史 法の雨

下村敦史 「法の雨」
下村さんの新刊が出ていたので買ってみました。自粛で本屋さんに行けていないので新刊の情報に気付きづらくなっています。
 

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裁判にて逆転無罪を言い渡し続ける判事がおり、有罪率99%以上と言われる日本では異例として世間では騒がれていた。しかし暴力団組長が殺害された事件で無罪となった看護師が釈放後に組員の報復を受けて殺害されてしまう。無罪ではなかったのではと疑い始めた当時の担当検事が真相を探ろうとするがその判事は既に認知症となって施設に入居しており、真相を探るのに難航するというお話。
 
法をテーマにしたミステリー小説です。
裁判官、検察官、弁護士といった法を生業とする人々が法によって苦悩するシーンが多く書かれています。法と聞くと「融通が利かない」「冷たい」という印象ですが、上記の生業とする方々もやはり人間なので良心を苛まれたり、何とかしたいと苦しむ場面が上手く描かれています。読んだことで私の中ではこれらの職業の方に対する印象が変わりました。
ミステリーとしてみると、題材が上手く使われていて非常に面白いです。登場人物たちが何を重んじて行動しているのかを見抜いていかないと真相が分からないようにできているため、推理しながら読んでいってもよいと思います。
 
法は救いかあるいは縛りか?とこの作品では何度も問いかけられていました。
私にとっての法はスポーツのルール程度の認識です。ルール内であってもバッシングされる作戦もあれば、故意でない事故でも違反になることがあるので、自分の行動を決めるときに法を気にしても意味がないと思っています。もちろんルールは破らないに越したことはありません。ですが法に違反するけどどうしても譲れない行動があったとしたら、私なら逮捕も死刑もすべて覚悟して実行します。カッコいいこと言っていますがこれまで生きてきてこれに近しいアクションは一回しかしたことないですけどね。
 
作中にて私刑について語られていました。
最近だとコロナで陽性と分かっていながら不適切な行動をしてネットリンチにあった女性が話題になりましたね。私は私刑に対して恐怖や嫌悪感はないです。ネットの住人たちは自分が悪役になる可能性がないと確定しない限り攻撃してこないので、普通に慎ましく生きていれば私刑にあうことはありません。
ネットリンチが始まる流れは、①違反ではない悪事をする→②それをどこかに自慢する→③見つけた人たちが攻撃する、というものです。こうしてみると「まっとうに生きられないけど自分の凄さを見せつけたくて仕方ない人」しかネットリンチの被害を受けないと分かります。本人は世間に自分を見せつけることに成功し、ストレス発散したい人は存分に叩けるというwin-winになっているので何も問題ない。それが嫌であれば平凡に慎ましく生きていれば良いだけの話です、
 
正義感の強い職業が集まった作品なので、そういった内容に興味がある方にはおススメです。