花の本棚

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沖方丁 十二人の死にたい子どもたち

沖方 丁「十二人の死にたい子どもたち」

書店で見かけて面白そうに見えたので買ってみました。作者の名前も見たことがある気がする。

あるWebサイトで集った12人の子供たちが廃病院に集合していた。目的は全員が安楽死したいと一致したら決行するというルールで全員揃って安楽死をすること。用意された病室ですぐに決行されるはずだったが、そこにはすでに少年が一人死亡していた。少年はなぜ死んでいるのかを探るか、安楽死を決行するかを多数決で決めながらそれぞれの思いをぶつけあう、というお話。

 

社会問題系とミステリーが半々になっている一冊です。
「子供は何に悩んで死にたくなるのか」がテーマです。生活環境だったり病気だったり、はたまた思考の偏りだったりと理由は様々です。
大人である私たちから見れば「そんなことで・・・」と思うところはありますが、生活空間の狭さからか本人たちに取っては深刻なこととなります。
もしかしたら自身の子供の頃にも似た悩みがあったなぁ、と共感できるかもしれない。

ミステリーの方は結構難しいです。証言中心で推理しないといけないので繋がりを意識しづらい。難解ですがところどころに出てくる伏線は回収されているのでちゃんと見ていけば推理できるはず。私は社会問題のパートが気になって推理の方はほっぽってしまいました。

 

本書読んでいると、悩みを共有できる相手がいるかどうか、が悩みを深刻化させないキーになりそうです。これは子供に限らず社会人である私たちにも同じでしょう。
共有する相手として一般的なのは親となるのですが、親が子供の悩みを軽く扱うと子供の思考がねじ曲がってしまいます。自身にとって深刻な悩みを親が大したものじゃないと扱うと「この程度のことで思い悩むこと自体がダメなこと」と子供が思い込んでしまいより悩みが悪化します。
私が思うに子供の悩みを軽率に扱う親は「自分はもっと大きな苦労をしている」とアピールしたいだけでしょう。親が優越感に浸れるだけで事態は何も進展しない無意味な対応です。
私は社会人になってから悩みを話す相手には慎重になりました。というのも悩みを話すとそこを踏み台にして「お前の苦労は生ぬるいアピール」と「俺はもっと苦労してるんだぜアピール」をしてストレス発散をはかる人が想像以上に多い。そういう人に悩みを話すのは時間の無駄、下手をすればマイナスになるので相談相手は見極めましょう。

この作品はお子さんがいる人やこれから生まれる予定のある人が読むと良い。今一度子供の視点に戻ることで子供の悩みに寄り添うための何か発見があるかもしれません。