花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

仙川環 疑医

仙川 環 「疑医」

本屋で見かけて買ってみました。帯によると「医療ミステリーの第一人者」らしいです。

主人公は女性記者。脳卒中を手術せず自然療法のみで治療するとして話題になった医者を取材する。取材するうちにその療法について疑問が湧いてくるが、記者として目玉記事を書きたいと意気込むあまり先輩記者の忠告を聞かずにその医者を支持する記事を出してしまう。記事が出てから間もなくしてその医者の治療のせいで家族が亡くなったというインターネットサイトの書き込みを発見し、読者からも抗議の電話がかかってくるようになる。医者の療法は果たして本物なのか?を追求するお話。

 

第一人者と言われているだけあって内容が分かりやすい。医療系の本は専門的な話が出てくるので理解が難解だったりするんですが、この本での説明は理解しやすかった。
また如何にして巨悪を暴くか、という駆け引きがあるのも面白い。最初は険悪だった先輩記者と真相を追ううちに信頼関係深まっていくあたり、半沢直樹とか好きな人ならワクワクしながら読めるはず。

 

本書の中では不安に付け込まれると騙されてしまうという点がよく書かれています。
「不安を解消するためにお金を払うこと」というのは効果があると私は思っています。今でも騒がれる振り込め詐欺が無くならないのは、被害者が「詐欺でもいいからお金を振り込んで安心したい」という心理状態になるからだとか。それくらい人間は不安な心理状態でいることに耐えられないように出来ているのです。詐欺でなくても「結婚できなくて将来幸せになれない」や「お金が足りなくならないように増やさないと」といった不安は周りからよく聞きます。なので「この金額を払ってこのリスクからの安心を得るのは割に合うか?」を常に考えることにしています。~~にお金を使うことが悪い、と決め付けるつもりではなく、その人にとって納得のいく払っただけのプラスがあれば良いです。

 

私の身近な話だと、最近保険屋さんと話をする機会がありました。保険のこと知らなかったので話を聞いてみたのですが、「年金が減ることによる老後の不安」についてかなり煽られました。だから年金積み立てをしてみませんか、と。来るか分からない危機に過剰に備えるのは好きではありませんので丁重にお断りしました。仮に本当に危機が来ちゃったとしても備えないのを選んだのは自分なので割り切れます。「銀行マンと証券マンと保険屋は信用するな」というのが私の父からの言葉です。全部経験している人からの言葉は重い。

 

この本は読みやすくてなかなか楽しかったので、違う作品も読んでみようかな。