花の本棚

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今村昌弘 兇人邸の殺人

今村昌弘 「兇人邸の殺人」
気になってはいたのですが少々間が空いてしまった作品。既に読んでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

 

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主人公の探偵と助手は班目機関の研究施設があるという廃墟っぽさを売りにしたテーマパークに研究資料を欲しがるチームと共に訪れる。そこには夜になると人を襲って首を切り落とす巨人がおり、襲撃を受けて探偵が行方不明になってしまう。しかしチームメンバーの思惑が違い過ぎて逃げることも救援を呼ぶことも出来ない状況になってしまう。さらに襲撃に紛れて巨人の仕業でない殺人まで発生してしまう。事件を推理するか、襲撃を生き延びるか、を苦悩しながら真相を探るというお話。
 
今村さんのシリーズ物の3作品目になります。内容としてはSF風のミステリーになっています。
読んでみるとシリーズ当初よりもSF感が強くなってきてミステリー風のエンターテインメント系作品のような感じです。内容量に対して推理出来る部分は少なめであり、思い返してみると謎のままで終わってしまった部分もあります。ということから推理するよりもストーリーを楽しむように読む方が良いでしょう。とはいえSF要素が入っていながらもその少ない部分はミステリーとして上手く出来ているのでちゃんとミステリーを楽しめるようにもなっています。
 
作中にて安楽椅子探偵について語られている場面があり、優秀なのは探偵ではなく推理できるほど必要な情報を的確に持って来られる相棒の方だと分析しているシーンがありました。
作中では推理にフォーカスが当たっていましたが、現代では何をするにも情報量が多くなりがちなので情報を選定することが重要だと思っています。近年のコロナ騒動なども含めて私が思うのはどこまで情報を集めるか線引きをちゃんとするべきだということです。現代ではネットなどで情報収集するとほぼ無限に情報が出て来てしまうので、自分で選定できる量で止めないと情報を選定しきれないこと其の物でストレスになってしまいます。選定しきれないなら頑張って集めてもいい結果にならないので、最初から集めないかいっその事信頼できる詳しい人に聞いてしまえば良いと私は思っています。Googleなどで何でも調べられるのに人に聞くなんて、という意見はたまに耳にしますが調べる対象によって収集と選定に得手不得手が出てくるので全部自分でやろうとしない方が良い。せっかく人間という集団で生活する生き物に産まれたのですから情報の処理についても支えあって何も問題はありません。
 
このシリーズが好き、または気になるという方はぜひ読んでみてください。