花の本棚

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阿津川辰海 蒼海館の殺人

阿津川辰海 「蒼海館の殺人」
以前読んだ「紅蓮館の殺人」の続編が出ていたので読んでみました。
 

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前作の事件の後、探偵役だった学生が傷心して学校に来なくなった。助手役とその友人が様子を見に行くと館では彼の祖父の法事を行うために彼の親戚一同が集まっていた。その中に紛れていた記者が祖父の死は殺人であると話始めたことで場の雰囲気は重苦しいものとなる。その最中、豪雨が降り始めたことで屋敷から出られなくなると同時に殺人事件が発生する。洪水から非難しつつ一連の事件の謎を解くというお話。
 
推理をメインに置いたミステリー小説です。
全600ページほどの内容なので謎の数も多くて自分で推理するのが好きな方にはうれしい作品だと思います。推理する材料も物証や発言だけでなく人物の性格や生い立ちなど色々な面から考える必要があるため、解き応えは十分にあるかと思います。
また自分を見失ってしまった探偵役が立ち直るために悩んだり、助手役や友人が寄り添ってくれたり、といったシーンは暖かなものになっています。こういった推理以外にも良い部分があるので謎解きせずに読んでも楽しめる内容となっています。ただ、何があって探偵役が傷心しているかは前作を読まないと分からないので、こちらの部分を楽しみたい方は前作を読んでからにした方が良いです。
 
 
作中にて今まで見下していた相手に打ち負かされる、というシーンがいくつか出てきます。おそらくですが探偵役が立ち直る過程として本作のテーマの一つになっていると思われます。
会社などにて下に見ていた人に打ち負かされたことが私は一度もありません。なぜなら、配属早々に自殺を要求される私よりも下の人間など絶対にいないからです。仮に存在したとしても、自殺強要より酷いとなればとうに誰かに殺されていると思うので会うことはないでしょう。
ですが、私が期待したアクションをしなかったせいで相手の方が職場で怒り始めるシーンは何度も見たことがあります。私にない感情なのでよく分かりませんでしたが、私に反発される=馬鹿にされているという図式なっていると考えるのが一番自然でした。このような衝突が先輩だけでなく後輩相手でも起きるので、私を認知している人からは総じて下に見られていると思って日頃行動しています。悪気はなくても相手に負の感情を起こさないようにするのが社会人のマナーであると心得ています。
 
謎解き要素が多いので推理が好きな人はぜひ読んでみてください。