花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

垣谷美雨 七十歳死亡法案、可決

垣谷美雨 「七十歳死亡法案、可決」
以前この作品が紹介されているのを見かけて読んでみました。

 

f:id:flower_bookmark:20210207114934j:plain



 
高齢者が多くなりすぎたために日本政府は財政難を脱却するために七十歳になったら安楽死させる法案を可決させた。長年義母の介護をしていた主婦は介護生活に終わりが見えて喜んでいた。しかし世間では法案への反対意見が多くあるために廃案に向けての動きが見え始める。法案があるものとして過ごしていたために家庭内の関係が悪化し、いつ終わるか分からない介護に戻ることに主婦は絶望する。法案は果たして施行されるのか?というお話。
 
現代の日本が抱える問題をSF風に描いた社会問題系の作品です。
あらすじから少子高齢化がテーマかと思ったのですが読んでみると現代の様々な問題を扱っています。老後が70歳までしかないなら家族よりも自分を優先して好きなことしたい、この先に希望を持てず死にたい若者にも安楽死を提供してほしい、などといった問題についても描かれているため読んでいてためになります。こういった法案が仮にできたとして、本当に良い方向に世の中は進むのだろうか?と色々な想像を膨らませて考えることもできますので良いきっかけになると思います。
一点気になるのはラストの展開で、かなり強引にハッピーエンドに持っていった印象です。それまでに描写していた問題たちをかなり雑に片づけて終わらせているので煮え切らない感じが残ってしまいました。
 
作中では国の財政難のために70歳で安楽死する法律が出来たとされていました。現実でこういった法律が出来た、もしくは作る動きになったとき世間は賛同するのか?というのは気になるところです。考えてみたのですが、そこに属する人々がどれだけ目の敵にされているかにかかってくると思います。実例として、海外のある地域でコロナウィルスのことを「ブーマーリムーバー」と呼び歓迎する動きがあったといいます。このようにその属性の人から嫌な目にあわされた人が多くいると排除する動きが出てきたときに賛同へ傾く気がします。あくまで世論の賛同なので算出された数値や妥当性よりも感情論で賛同率は決まるでしょう。
日本の場合、おじいちゃんおばあちゃんに親しみがある人が多いので財政難のために高齢者を犠牲にする動きはあまり賛同を得られないと思っています。逆に目の敵にしている人が多そうな属性を考えると生活保護かなと思っています。犯罪者関連の費用あたりも有力でしょうか。
私個人としては高齢者を切り捨てるのは反対です。今まで出会った高齢の方々は素敵な方が多かったので作中のような形でいなくなって欲しくないです。仮にどの属性の人たちだったら切り捨てを賛同できるか、と考えたら就職氷河期世代の人たちを選びます。私の経験談として攻撃されたエピソードを時々書いていますが、それらを含め私の人生で邪魔になった人たちの9割は就職氷河期世代の人たちです。異様なまでに傲慢だったり、卑屈だったり、攻撃的だったりと人格が強く歪んでいる人と出会ったときに年代を確認するとほぼこの世代の人だったので接するときに最も警戒すべき年代だと思っています。以前政府が打ち出した就職氷河期世代の支援を打ち出していましたが、それが無しになったとしてもこの世代はいなくていいから構わないとしか思いません。
 
作中にて高齢者介護をしている女性が「世話をされている本人が一番つらい」と言われる場面があります。こういった苦労競争が大嫌いなのは何度かお話していますが、もう一つ嫌いな理由をお話します。この発言は事実を言っているだけで何の進展にもならない無価値な発言だという点です。
何かを解決するためのきっかけや分析に使うのが事実です。社会人の方なら想像できると思いますが、事実に対して自分なりの意見や仮説、アプローチ手段などを付け足して初めて価値が出ます。誰も気づいていない新事実でない限り事実だけ投げつけて逃げる人は卑怯者でしかありません。特に上記のようにアクションを強要しているのに自主的なアクションとして起こさせようとする人は卑怯者の極みなので即刻縁を切るべきです。
 
こういった問題にこれからもしくはすでに直面している方にとっては色々なことを考えるキッカケとして良い作品だと思います。