花の本棚

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荻原麻里 人形島の殺人

荻原麻里 「人形島の殺人」
あらすじを読んで面白そうだったので読んでみました。
 


主人公の幼馴染が突然姿を消した。残された手紙によると彼女は故郷の島へ帰っており、その一族は人形を使った呪術を引き継ぐ末裔とのこと。
彼女の行方を追って島に来たところ崖に吊るされた遺体と遭遇し、それは一族の長女の遺体であると判明する。幼馴染は昨晩からいなくなっており長女を殺害した犯人だと一族の者たちが決めつけていることから、主人公が彼女と共謀していると疑われてしまうというお話。
 
オカルト系のミステリー作品となります。本作はシリーズものなのですが、知らずに最新刊から読んでしまいました。
島の一族が殺害された理由を探っていくのが本作のミステリー部分となります。どういった理由なら説明がつくか、を一族の関係や背景から読み取っていくように読んでみると楽しめるでしょう。幼馴染がなぜ島に戻ったのかという点も事件には絡んでくるのでそこも見所になるかと思います。一方で舞台設定の影響もあって物的な証拠がほとんど出てこないので犯行の方法を推理できないので、そこは好みが分かれるところになりそうです。
一つ気をつけたいのは、ストーリー面で見るとシリーズを読んでいないと分からないところがある点です。主人公と幼馴染の関係性、紹介のない人物が出てくる、など前作を読んでいる前提で書いているようです。前作から読んでいないとダメというほどではありませんが、ちゃんと楽しみたいと考える場合はシリーズの最初から読んでいった方が良いでしょう。

 
作中にて将来災いになるかもしれないなら火種を先んじて消す、という考えのもとに襲撃されるシーンがありました。悪役がやると盛り上がる行動なのですが、これを現実世界に当てはめると「取り越し苦労」という行動になります。
私は取り越し苦労が大嫌いなのですが、行動そのものは非常に強力で使い勝手が良いと思っています。なぜかというと当たっても外れても損害がないからです。具体的に言うと、取り越し苦労が当たったときは「私の言ったとおりになった」といって騒げば自身の知性の高さをアピールでき、仮に外れて追及されても「大事にならなかったのだからいいじゃないか」と言い逃れができます。つまり取り越し苦労はマウントの取り合いにおいて損が絶対ない非常に安定した行動となります。
取り越し苦労はこういった性質なので臆病だけどプライドだけは高い人に愛用されるでしょう。実際に私の職場にも取り越し苦労大好きな同僚が何人かいますが、自分では何もしないのにプライドだけは高くて偉そうという共通点があるので上に書いたことは十中八九当たっていると私は思っています。
 
本作単体でも楽しめますが、気になるという方はシリーズとしてチェックしてみると良いでしょう。