花の本棚

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孫沁文 厳冬之棺

孫沁文 「厳冬之棺」
あらすじを読んで面白そうだったので読んでみました。
 


湖のほとりに建つ屋敷の地下室にて遺体が発見された。その地下室は近日の大雨で出入口が水没しており密室状態であり、現場にはへその緒が残されていた。屋敷の主の一族は男性しか産まれないとされているがその実態は女児が産まれると湖に遺棄する習わしによるものであり、この事件は捨てられた女児たちによる呪いであると一族たちは恐怖していた。刑事たちが捜査しても密室の謎は解けず、そうしている間に密室によって一族の者が再び殺害されてしまう、というお話。
 
密室殺人をメインにしたミステリー作品となります。
華文ミステリーとは中国圏出身の作家によるミステリー作品を指すようでそういった分野があるのを初めて知りました。中国圏の作家さんは私もこれが初めてです。
内容は硬派な推理ミステリーになっています。密室殺人の謎解き重視していることから現場状況の解説なども基本に忠実な感じで読みやすいです。自分で推理したい方も楽しむことが出来るのは本作の魅力でしょう。舞台が中国なので日本では馴染みがない物や名詞が出てきたりもするのですが、ちゃんと日本語の解説が付いていて問題なく読めるように配慮がされているのも良いところだと思います。
私が何よりうれしかったのは密室殺人の現場の見取り図が付いていたことです。それ普通でしょ、と思うかもしれませんが私が直近に読んだいくつかの作品では密室殺人を売りにしているのに見取り図がなくて現場の状況がまるで分からないというものがありました。密室は位置関係が大事なのですから見取り図はあってしかるべきですね、奇をてらって付けないとか正気じゃありません。
舞台は現代ですが言い回しや話の展開など作風は古典ミステリーに近い雰囲気になっています。近頃のミステリー作品は登場キャラクターなども含めて取りつきやすいキャッチーなものが多い中で珍しい印象です。そういった意味では最近のミステリーはちょっと合わない…という方には良いかもしれません。
 
古典ミステリーが好きな人には合う作品だと思うので、気になる方はチェックしてみてください。