花の本棚

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月原渉 炎舞館の殺人

月原渉 「炎舞館の殺人」
以前読んで面白かった月原さんのシリーズ物の最新刊が出ていたので読んでみました。
 

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山奥にある館には陶芸家とその弟子たちがいた。欠落こそが芸術に不可欠という陶芸家のポリシーから弟子たちはいずれも体に欠損のあるものが集められていた。あるとき陶芸家が行方不明となり後継者問題で揉めていた際、弟子の一人が胴体を持ち去られた遺体となって窯の中で発見される。また弟子たちは同じ手口で欠損しており、欠損させた犯人は師で弟子たちを殺害して最後の作品とするつもりではと疑い始める、というお話。
 
こちらはシリーズ物のミステリー小説です。シリーズ通して登場する使用人が探偵役となり真相を解いていくお話となります。
メインは事件の真相を解くミステリー部分となります。登場する弟子たちは全員欠損があるため、アリバイなどよりはそもそも誰が犯行を実施できるのか?という視点で推理していくという流れです。このあたりは他の作品と少々違いがあって面白い部分でした。
また人間模様の部分の描写も見所になります。犯行はなぜ起きたのか?師はなぜ欠損のある子を集めたのか?といった心情の描写が上手いのでこちらも読んでいて面白かったです。
 
本作の内容とは外れますが考えたことがあるので書かせていただきます。
本作のタイトルを見て綾辻さんの館シリーズにあやかっているだけでは?と思う方もいるのではないでしょうか。どういった経緯で作品のタイトルが決まるかは把握していないのでそこは置いておくとして、過去の有名な作品にあやかるのはどうなのかという話をしたいと思います。
私は大いにアリだと思っています。理由は名作を生みだした著者、シリーズ物がずっと面白いまま続くことはないからです。少なくとも私が読んでいる中ではハズレが一つもないという著者またはシリーズ物はありません。老いて今までのような才を発揮できなくなったり、時代のニーズに応えるための磨きが出来なくなってしまうことは誰でもあります。単に私が綾辻さんの館シリーズが楽しめなかったというのもありますが、綾辻さんの館シリーズは最近続編が出ていないのを見るに上手く続きを書けなくなってしまっただろうと見ています。という点からそれらの影響を受けて作品を作り出す後進の方々が現れることで、良い部分が受け継がれていくのは一種の世代交代だと思っています。なので月原さんのシリーズが続くことを私はとても期待しております。 
 
推理以外の面でも楽しめる部分がある作品ですのでおススメです。