花の本棚

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市川憂人 ヴァンプドッグは叫ばない

市川憂人 「ヴァンプドッグは叫ばない」
市川さんの新刊が出ていたので買ってみました。「ジェリーフィッシュは凍らない」から続くシリーズの最新刊となります。

 



 
主人公の警部たちは強盗集団の行方を追っていたが、応援要請を受けて別の市に向かっていた。要請の理由は20年前に逮捕された殺人鬼「ヴァンプドッグ」が逃亡し、被害者の首から血を吸ってその痕跡をえぐり取るという彼の特徴的な殺害方法による遺体がすでに見つかっているためであった。彼は狂犬病の変異体ウィルスに感染しているために刑務所ではなくウィルスの研究所に収容されていたから逃げることができたと判明する。
一方で強盗集団は現金強奪後にある屋敷に身を潜めていた。屋敷周辺で殺人事件があったらしく警戒が厳しいため滞在していると、彼らのリーダーが首元をえぐられて殺害されているのを発見する。ヴァンプドッグが潜んでいると疑心暗鬼になっていると、次々と仲間が同じ手口で殺害されてしまう、というお話。
 
内容としてはSF風のミステリー作品となります。上記のように現実にはない(はず)の変異ウィルスが出てくるので「SF風」という分類が合っているだろうと思います。
このシリーズは謎のスケールが大きくてすべて推理しようとするともの凄く大変で、本作も過去作と同じくらい謎のスケールが大きく作られています。規模が大きい分、伏線や証拠も広範囲に分布されており、終盤でそれらを全部つないでいく展開は非常に面白い。これだけの規模でありながら上手くつなげられる市川さんは凄いなと改めて思いました。
なお本作には過去作で登場したキャラたちが登場してきますので前作を読んでおくとより楽しめます。読むのが必須というほど重大な部分ではないので未読でも問題はなく、せっかくならちゃんと楽しみたいと考える方は過去作を先に読んでみるのも良いでしょう。
 
読み応えのある長編ミステリー作品ですので、ミステリー好きな方はぜひチェックしてみてください。