葉真中顕 「コクーン」
葉真中さんの作品で気になる者があったので読んでみました。

宗教団体「シンラ」のメンバーたちがテロ事件を引き起こして騒動となる。その団体の教祖やメンバーと関わった人物の前には金色に輝く蝶の幻が現れていた。
テロ事件により息子を亡くした女性はあるとき知人の紹介で生活保護者やホームレスを収容する病棟に勤め始める。ある時、新たに入居してきた女性がテロ事件を起こした教祖の母親であると気づいてしまう、というお話。
新興宗教団体と社会問題の関連をテーマにした短編集。上に書いたのは最初の章のお話であり、その宗教団体の関係者たちに関する物語で各章が構成されています。
宗教団体のメンバーの親族、教祖の幼少期に一緒に過ごした人、など宗教にのめり込んでいく者や不幸になった周囲の者以外にも様々な社会問題的な視点からも心理描写が描かれている点が本作の見所となります。新興宗教自体については描写があまりないので、メインはこの部分と見て良さそうです。その描写内容は非常にリアルなものとなっているため、心理描写系が好きな方には楽しめる内容となっているでしょう。
また本作内では「バタフライエフェクト」がよく登場します。これについて登場人物たちがどう考えているかの見解が描かれているので、それらを読みながら自分はどう思うかと考えながら読むとより楽しめるかと思います。
一つ気になったのが本作の結末。言いたいことは分かるのですが、それで物語を締めるのは個人的には収まりが悪い印象でした。この部分は見解が分かれる点になりそうです。
作中には「バタフライエフェクト」についての登場キャラが考えているシーンが多くありました。語源は「ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?」で、わずかな変化が後に大きな変化の引き金になることを意味しています。作中で色々な考え方が出ていたので、自分はどう考えるかを考えてみようかと思います。
私の意見として、バタフライエフェクトは「自分に都合よく解釈して納得する」くらいの軽い思想で良いと思っています。何か良いことがあったときに「あの時にやったアレのおかげか?」と考えて、過去の自分偉いな!と前向きに捉えるために使う感じです。こういった経験を積み重ねることで「とりあえずやってみる」のハードルを下げていけば、面白いことが色々起きて楽しくなっていく、というのが私の考えです。
あまり大袈裟に解釈すると意識高い系や宗教じみた思想になってしまうので、これくらいライトな方が良いでしょう。
どちらかというと社会問題寄りの作品でしたので、気になる方はチェックしてみてください。