花の本棚

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小川哲 君のクイズ

小川哲 「君のクイズ」
以前から気になっていた小川さんの作品を読んでみました。

 



 
主人公は競技クイズプレイヤーでクイズ番組の決勝戦に出場していた。勝者が決まる最後の問題にて対戦相手は問題文が読まれる前に正解言い当てて優勝してしまう。同大会の出場者たちは番組側のヤラセだと抗議するが、対戦していた主人公は彼の戦いぶりからヤラセだとはどうしても思えなかった。彼のことを調べつつ当時の番組を見返しながらなぜ彼が正答することが出来たのかを探るというお話。
 
競技クイズをテーマにしたミステリー風エンターテインメント系の作品となります。
競技クイズに関してプレイヤーやクイズ番組などについて詳しく描かれています。競技クイズプレイヤーたちがどんな風にしてクイズの強さを磨いているのか、クイズに回答するまでの僅かな時間にどんなことをして正答を導いているのか、などが細かく描かれていて面白い。私は本作読むまで競技クイズについて何も知らなかったので、こんな凄いことをしている人たちなのだと知れて非常にためになりました。
他にもクイズ番組を企画、制作するときに制作側がどんなことを考えているかといった話も描かれているのでこちらも見所になるかと思います。
ミステリー要素としてなぜ問題文を読まれる前に回答できたのか?の部分があるのですが、これについてはそこまで深くないので推理などをする必要はありません。話を面白くするために用意されているという程度の認識でOKです。
 
作中にてクイズに答えられることは人生においてそれと関わったことがあるから、とのことです。これは正しいような気がします。つまり日常生活で返答を窮する場面が出てきたときというのはそれに対して関わったり真剣に考えたりしたことがないから、ということになりますね。そこで私が考えたのは日常で遭遇するあるクイズも努力次第では切り抜けられるということです。
それは全クイズ中でも難易度は最上位であり、なおかつ人類の長い歴史の中でも正答できた人間はほぼ0であるクイズ。それは…

 
Q:なんで怒ってるか分かる?

 

すべての人類が一度は遭遇し、奇跡的に正答しても地獄行きという理不尽さまで持つ最強最悪なクイズです。しかし上に書いたクイズに答えられる仕組みを使えばこのクイズを正答することが可能になるかもしれません(しても地獄行きですけど)。つまりなんで怒ってるか分かる?と言ってきた出題者が自分のどんな行動に怒りを覚えるかを日頃から真剣に考えながら生活することで正答に近づけます。そのためにも自分が何か行動する度に出題者が表情や言葉などでどんなリアクションをしてきたかを常に分析して積み重ねていけばいい、ということです。それくらいなら何とか…と思うかもしれませんが、これに加えて出題者が他の人と比較してあなたへの怒りが生じるパターンなどもすべて分析しきらないと正答までの道が開きません。しかもこれだけやって正答しても地獄行きなのがこのクイズが最強最悪たる所以でしょう。本書で読んだ競技クイズプレイヤーたちの思考力や分析力は凄まじいものがあったので、彼らが真剣に取り組んで挑めばこのクイズにも正答してくれるのかな、なんて私は考えていました。
 
エンターテインメント系の作品として非常に面白いので、そういった系統が好きな方は是非読んでみてください。