花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

早坂吝 〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件

早坂吝 「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」
前に読んだ早坂さんの本で知り合いに紹介してもらった作品があったので読んでみました。

 



 
主人公の男性はブログで知り合った仲間が所有する孤島で開催されるオフ会に参加していた。ブログの持ち主が無断で恋人の女子高生を連れてきたことでひと悶着あったが、孤島に着いて楽しい時間を過ごすことができた。翌朝起きてみると島のクルーザーが無くなっており、メンバーのうちの二人が置き手紙を残して失踪してしまう。二人は失踪ではなく殺害されたのではと疑問に思っていたところにもう一人メンバーが殺害されてしまう、というお話。
 
メフィスト賞を受賞したミステリー作品となります。
本作の見所はタイトル当てにあります。タイトルである〇x8は漢字を含む8文字のことわざを表しています。このことわざが本書の犯人を特定する証拠を表しているので、それを当てるというのが本作の見所になります。…なるのですが、この仕組みがイマイチ機能しておらず後から取って付けた感が強い。というのも犯人を特定する仕掛けを解くのがあまりに難しくて、ほとんどの場合犯人が分かってからことわざが何か分かる、という流れになります。そうなるとただタイトルを〇で隠してあるだけになってしまい、結果としてタイトル付けるのさぼったという状況になります。これだったら最初からことわざだけ提示されていて、それをヒントにしながら仕掛けを当てるという逆の形式の方がまだ面白みがあったと思います。
ですが、ミステリーとしてみると質が高いです。伏線の張り方と終盤へのつなげ方が非常に上手くて、ミステリーが好きな人なら間違いなく楽しめると思います。それだけに上記のことわざ当てが蛇足になってしまって本当に勿体無い、というのが私の感想でした。ですがそういう書き方にチャレンジした、という心意気は素晴らしい。こういったチャレンジと遊び心を持った作家さんは好きなので今後も注目していこうと思います
 
他のミステリー作品とは一味違う遊び心に興味がある方はぜひ読んでみてください。