花の本棚

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神津凛子 スイート・マイホーム

神津凛子 「スイート・マイホーム」
知り合いに紹介してもらって読んでみました。
 

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寒がりの妻のために温かさを売りにした「まほうの家」のモデルハウスを見に行くことにした。結果として「まほうの家」を購入し念願の一軒家を手にする。しかし完成した家に友人たちを招いてみると、子供が青ざめて逃げ出す、同僚が幽霊を目撃するなど奇妙なことが起こり始める。不気味さは家の外で発生するようにもなり、ついにはモデルハウス購入で一悶着あったマネージャーが殺害される。「まほうの家」に蔓延る不気味さの正体を探るというお話。
 
ホラー系のミステリー小説となります。
帯によると「イヤミス」のさらに上を行く読後おぞましくなるミステリー、「オゾミス」と題されていました。イヤミスとどう違うのかは読んでもハッキリとは分からなかったので、同じジャンルと捉えても問題ないです。
内容はというと日常的にありそうなおぞましさが上手く書かれています。
一軒家購入を題材として「言われてみればこういう不気味なこと出来なくはない」という不気味さを味わうことができます。私はホラー系あまり読まないので他の作品と比べるとどうなのかはわからないので、そこは詳しい方の意見を聞いてみたいです。
ミステリーの方も思いのほかちゃんと書かれています。おじましいの方がメインで添えてある程度なのかと思ったのですが、出てくる不気味な部分もつながるようにできています。
 
本書にみんなが不気味がる家に自分は帰らなければならない、というシーンがあります。家というのは本来安全安心な場所であるべきなのにこうなるのは精神的に苦しいというのは想像できます。
私は恵まれているせいか家が苦痛な場所になったことはありませんが、家が帰りたくなるような場所かどうかは非常に重要だと思っています。帰れば味方がいるという状況は非常に心強くて、外でどんなに酷い地獄に遭遇しても生きていけます。
逆に心配なのは、近頃の働き方改革のせいで定時に帰れるようになったけど家に帰りたくない「ブラリーマン」が増えているとテレビで見たことです。夫に帰ってきてほしくない…と妻が嘆くのは昔からなのでまだ分かるのですが、家事や子育てが嫌で夫の方が帰りたくなくなっているというのは非常に問題だと思います。両親やヘルパーに一部手助けしてもらうなど今ならたくさんサービスあるから手はありそうな気がしますが、何が起きているのでしょうかね。
 
全体的によくできている良い作品でした。
湊かなえさんや秋吉理香子さんの作品が好きな方なら読めば楽しめると思います。