花の本棚

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まさきとしか 完璧な母親

まさきとしか 「完璧な母親」
まさきとしかさんの作品の中でタイトルが気になったので読んでみました。
 

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池で溺れて男児が亡くなる事故が発生した。その母親は息子を失ったショックを癒すために新たに子を産むことを決意し、息子の誕生日に産まれた娘の中に息子がいると信じ込み始める。誕生日を二人分祝うなど息子への執着から歪んだ行動をし始める母親に夫や周囲の大人たちは怯え、娘も孤立しはじめるというお話。
 
母親の愛をテーマにした作品です。
子を育てるにあたって母親たちがどのようなことを悩み、考えているかがリアルに書かれています。同著者の作品に「ゆりかごに聞く」という親の在り方をテーマにした作品があるのですが、比較するとこちらは狂気な面にフォーカスが当たっているのでダークな雰囲気になっています。モンスターペアレントと呼ばれる親たちの内面はこんな風になっているのかな、なんて考えてしまいました。
また同時に歪んだ愛を注いできた親を子供は赦すことが出来るのか?についても書かれています。幼少期を親のせいで幸せに過ごせなかった子供たちは大人になって当時をどう見ているのか、という描写は読んでいて考えるところが沢山ありました。
ミステリーの要素も少し入っているので展開が一転二転して最後の方まで飽きずに読めます。
 
本作では幼少期に酷いことをした親を子は赦すのか、について書かれています。
私は赦してもらうに相応しい行動をしているか、というシンプルな話だと考えています。赦してもらうための努力を何もせず時効で赦してもらおう、という卑しさが見えているから亀裂が埋まらないだけです。子供というのは親が想像する以上に親の本心を見抜いています。親は子のことは何でもお見通し、とよく言われていますが自分が見通されていることには気づかないのでしょう。
「人を許せないのは弱いから」という言葉を聞きますが、これは間違っている。むしろ相手が謝罪してきた程度で揺らぐ方が弱い。何をして来ようが地獄の果てまで恨み通す方がはるかに強靭です。一生恨まれる覚悟もなしに恨まれる行動している人に対してみなさん随分と優しいんだなぁと思います
 
作中にて母親が夫や独身女性からの指摘を出産したことがない人の意見として聞く耳持たないという場面が多くありました。
「経験がない人の意見は聞かない」姿勢の人とは関わらないのが良いと私は思っています。この考え方は意見の善し悪しではなく人の背景で判断しているので合理的ではない。そんなこと言っていたら最近のコロナへの施策は全員コロナ未経験の人類が出しているから聞かない、となってしまいます。
いい歳した大人の場合、未経験のことに口を出すほど暇な人は普通いません。それでも意見を言ってくるのは素人目で見てもよほど酷い状態であることがほとんどです。変にプライドを逆なですると面倒なことになるのでこのタイプは放っておくのが一番です。
 
母親に限らずお子さん、お孫さんがいる方が読むと色々思うところがあるのではと思います。