花の本棚

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千早茜 赤い月の香り

千早茜 「赤い月の香り」
「透明な夜の香り」の続編が出ていたので買ってみました。
 


主人公の男性は調香師である男性からの誘いで彼の館で働くこととなった。彼は優れた嗅覚を持っており、過去の思い出の香りなど依頼人からオーダーされた香りを作り上げる仕事をしていた。人間嫌いである彼が自分から人を招くことは珍しく、主人公を館に誘ったのには何か理由があるとのこと。前科持ちである自分をわざわざ雇いに来たことを不審に思いつつも、様々な欲望を満たすためにやってくる依頼人たちの要求のために仕事をする、というお話。
 
匂いと人にまつわる話を描いた作品です。
どんな欲望から人は匂いを求めるのか、など匂いと人間がどのようにつながっているのかを描いています。本作の見所は心理描写の仕方が非常に上手いところ。本作は欲望を中心に描いているので生々しい描写がたくさん描かれています。自身の欲望を満たすために高額を払って香りを作ってもらいに来るという設定なので依頼人たちの欲深さもすごくて、その不気味さの描写がとても上手く描かれていました。
また前作「透明な夜の香り」に出てきた人物たちに深く関わる話がいくつかあるため、より楽しむのであれば読んでおくと良いです。本作のメインの話は前作の内容を知らなくても大丈夫なので続けて読むことにこだわる必要はありません。
 
描写は少々重たいですが話の内容自体は軽めに作られているので、気になる方は気軽に手に取ってみてください。