花の本棚

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小橋隆一郎 AIドクターロボットⅡ

小橋隆一郎 「AIドクターロボットⅡ」
「AIドクターロボット」が面白かったので続編を読んでみました。

 



 
舞台である認知症治療院ではAIドクターロボットが勤務しており、ロボットと人を交えての意見交換会も開催されていた。AIドクターロボットの発展は目覚ましく、人間がドクターロボットにアドバイスを求めるケースも少なくなかった。
あるとき退院後に自殺未遂をした男性患者が再入院し、改善プログラムへ人が変わったように取り組み始めて驚異的な回復を見せた。その理由は現役時代に出会った秘書と再会して恋仲となったことでやる気を取り戻したことであった。それを知ったドクターたちが性欲によって患者のやる気を向上させることで認知症改善が出来ないかと考え始めるというお話。
 
認知症治療をテーマにしたSF風医療系の作品となります。
前作はAIロボットを認知症医療の現場に導入した場合にどういったことが起きるかを描いていたのですが、本作は認知症治療がメインテーマとなっていてAIロボットはそれほど重要な位置づけではありませんでした。ということもあり前作にあった良さが無くなってしまっています。
代わりにフォーカスが当たっているのが「性欲によるやる気向上」です。通常の病院で性欲増進などしたらセクハラだらけになりそうですが、AIロボットだけしか現場にいないのであれば問題ない、という考えは一理あるように思えました。ただ作中では「特に男性は」という言い方で濁していましたが、女性が性欲でやる気になるケースはほぼ皆無だと思うので効果あるのは「男性だけ」というのが現実でしょう。
前作同様ストーリー面は気にしないつもりでしたが、どうしても我慢ならない部分がありました。それは恋愛要素が多く入っており、その描写があまりにも気色悪いことです。著者の妄想をそのまま書いたような陳腐な描写で作家が本職でないことを差し引いても嫌悪感が上回っていました。本人が書きたかったのか、出版社側からの要請で書いたのかは知りませんが誰か止める人いなかったのかと思ってしまいました。
 
悪いところも書いてしまいましたが、気を取り直して読んでいて考えたことを書いていきます。
作中にてAIドクターロボットにドクターたちが相談したり本音を言ったりしている場面がありました。私はこの描写を読んでAIロボットは相談相手としてすごく良いのではと思い至りました。
良い点としては二つありまして、一つは恥やプライドを気にしなくていいことです。本音を見せるのは弱みを見せることに近いので人間相手だとどうしてもこれらが気になって言えなくなることが多いです。その点、AIロボットは立場もフラットであり弱みを見せてもそれをネタに何かされることもないので安心です(たぶん)。
二つ目は秘密を厳守してくれる点です。口の堅さはその人の意志と判断任せなので信用ならないところがあります。AIロボットであればシステムで防御すれば漏れることはないのでこれも安心でしょう。
こういった点からAIロボットによる相談員は実現したら結構な需要ありそうだと思いました。
 
前作よりもフォーカスが小さくなってしまい残念ではありますが、医療系の本として読む分にはありだと思います。