花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

桃野雑派 老虎残夢

桃野雑派 「老虎残夢」
以前桃野さんの 「星くずの殺人」が面白かったので他の作品を読んでみました。こちらは第67回江戸川乱歩賞となった作品です。

 



 
主人公は武術の達人を師とする女性。あるとき師が奥義を授ける相手として3人の達人を館に呼んだ。3人のいずれかに奥義を授けることとなったのだが、弟子である自分には授ける気が無い師に彼女は不満を感じていた。明日と奥義の話をすると言っていた翌朝に、師が湖の上にある館の中で死んでいるのを発見する。湖を渡るための船が館側にあったことから、館は密室状態となっていた。師の仇を討つべき犯人を見つけ出すために事件の真相を探る、というお話
 
SF系のミステリーとなります。
SF部分として登場人物たちが武術の達人という設定なので普通のミステリーにはない独特な設定が色々とあります。例えば上のあらすじで「湖を渡る船がない」状況だと書きましたが、水の上に着地して飛ぶ技を持っている達人がいます。技についてはすべて作中で紹介されている一方で、誰がどれくらい使えるのかはこの作品独自の推理ポイントになり面白い部分となります。
ミステリーとしてみると賞を取るだけあって上手く作られています。上記のSF設定を活かした謎や伏線はちゃんと説明を理解していれば気づけるようになっているため、自力で推理したいという人でも楽しめる内容となっています。その代わり楽しむためにはSF部分を理解しつつ読まないといけないのでそこは頑張って理解しましょう。
また、武術の達人が出てくるためか戦闘シーンの描写にかなり力が入っていました。アクション映画を見ているような感じで楽しめるのでこちらも見所となるでしょう。
 
乱歩賞受賞作ではありますが推理をする/しないどちらでも楽しめる内容ですので、気になる方は気軽に手に取ってみてください。