宇佐美まこと 「熟れた月」
宇佐美さんの新刊が出ていたので買ってみました。
闇金融の女社長、借金まみれで落ちぶれた取り立て屋の男性、貧しい家庭で育った陸上部の高校生、といった何人かの主人公の視点で物語が進みます。すべての主人公に共通しているのはお金によって人生が歪んでしまったという点であり、底辺まで落ちても人生を諦めきれずにいた。別々に進んでいた主人公たちは辿っていくと思いがけないところで繋がっていた、というお話。
底辺まで転落してしまった人々の再起をテーマにした作品となります。序盤がお金に対する欲望の話が多かったのでドロドロ系の話に見えましたが、作品通しての本題はこちらでした。どの人物も酷い状況から始まっており、そんな中から再起を決意して動き出すまでの描写はどれも感動的で非常に面白いです。
上でも書きましたが本作ではお金にまつわる話が多く出てきます。主人公たちがバブル時代に起きた異常なお金の動きに翻弄されたこともあり、バブルのときのお金の動きについても描かれています。私はバブル時代のことは話でしか聞いたことがありませんでしたが、この時代に現役だったのが羨ましいと言われる人々がいる一方で本書に書いてあるような狂わされた人々がいると思うと恐ろしい時代だと感じました。
宇佐美さんの作品は良いものが多いので、気になる方はぜひ読んでみてください。