花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

ヒキタクニオ 触法少女 誘悪」

ヒキタクニオ 「触法少女 誘悪」
以前読んだ同著者の「触法少女」の続編が出ていることに気づいたので読んでみました。

 



 
母親を殺害した少女が少年院から仮退院してきた。彼女が退院する日、女性刑事が訪ねてきて入院前に自分と親しかった同級生が自殺したことを知らされる。彼女は自殺をするような人ではなかったため、なぜ自殺したのかを知ろうと彼女の親を訪ねるが自分と関わったせいで娘が死んだと言われ拒否されてしまう。どうにか真相を知りたいと考え、自身のことを崇拝する過去に虐待を受けた人物たちの集団から支援を受けて調査を始める。調査を進めると、同級生を自殺に追いやった人物がいることが分かりその正体を探り始める、というお話
 
触法少年に対するネット上の誹謗中傷をテーマにした作品です。
触法少年とネット上の人々という人を死なせても罪に問われない人物同士の戦いという構図になっているのはよく考えられていて面白い。最近はネット上の誹謗中傷を逮捕したケースも出てきていますが、本書が出版された2018年ですと逮捕はまずないという状況だったために問題視して描かれたのかなと思います。
また本書では主人公を崇拝する過去に虐待を受けた人たちがその当時をどう見ているかという描写が描かれています。自分たちは当時親から一方的に虐待されていたために、親を殺し返す主人公の行動力が尊敬され崇拝に値するという考え方など様々な歪んだ考え方が描かれていて非常にリアルで不気味な描写になっていました。この部分も見所ではあるのですが、如何せん描写がダークなので少々注意が必要かと思います。
ちなみに続編ではあるのですが前作「触法少女」とのつながりはそこまでありません。なので前作を読んでからの方が良いか、といったことは気にしなくて良いでしょう。
 
作中にて親を殺すほどの行動力を持つ主人公に行動力は使い方をよく考えなさいと指摘する場面がありました。これを考えないと行動を起こした結果、さらに強大な敵が現れるなど逆に事態が悪化するというのに遭遇するから気を付けなさい、と作中では語られていました。これは私も同意する考え方です、私も行動力は高い方なので最近気を付けるようになりました。
私がよくやっているのは現状維持と行動して悪い方に転がった状況を比較する、というものです。このとき悪い方に転がった状況と現状の悪さが同等なら「失敗しても今と悪さが変わらないなら動いた方が得だな」と判断してすぐ行動に出ます。実は直近に職場で私が行動した実例があるので紹介しましょう。職場の先輩が人の話を聞かないタイプだったので、話しても時間が無駄になるからコミュニケーション取らないことにしていました。このとき、「現状コミュニケーション取らずに行動しているのと、コミュニケーション取らない理由を先輩に伝えた結果反発されてコミュニケーションできなくなるのって状況の悪さ同じでは?」と気づきすぐに先輩に向けて話を聞かないからコミュニケーション取りませんと伝えました。結果としては先輩も私の態度に薄々気づいていたようだったので仕事が少しやりやすくなり、行動して良かったなと思っています。
 
作中にて支援する男性たちが主人公に良いところを見せようとして張り合うという描写がありました。小学生レベルの争いだと主人公が呆れていたのですが、この異性のために張り合うというのは組織にとっては結構重要だと私は考えています。
「気配り上手で細かいことにも気づいてすぐやる人」という人が職場にいると有難いものですね。しかし想像してもらいたいのですが男性から見た「気配り上手の女性」、女性から見た「気配り上手の男性」は素敵に映るのですが「気配り上手の同性」って職場で素敵に見えますか?どちらかというと「使われている人」という印象になるという方が大半ではないでしょうか。何が言いたいかというとどちらか一方の性別しかいない職場だと異性に良く見せるための行動、つまり張り合いがなくなって上記の「気配り」と「細かい事」を誰もやらなくなるのです。私が何度か経験した同性だけの職場すべてで起きていたので間違いありません。そんなわけないだろうと思う方は、トイレの個室を確認してみてください。トイレの個室は「同性しか使わない」という上記と同じ条件なので、もしペーパーホルダーへの紙の補充を誰もせず芯だけ残っている状況が多発しているなら私の主張が確実に正しいです。
ということから職場が同性だけになるのは絶対避けるべきだ、と私は信じています。
 
重たい作品ではありますが面白い見所も多い作品なので気になる方は読んでみてください。