花の本棚

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天祢涼 拝啓 交換殺人の候

天祢涼 「拝啓 交換殺人の候」
あらすじを見て気になったので読んでみました。

 



 
主人公の男性は自殺するために首吊り桜と呼ばれる木がある神社にやってきた。木に登ってみると枝の洞に封筒が置いてあり、そこには自殺をするくらいなら交換殺人をしないかという誘いが書かれていた。洞に封筒を置くことでやりとりをするよう指示されていたため待ち伏せてみると、取りにやってきたのは女子高生であった。自分を追い込んだ上司の殺害を依頼するつもりであったが、そんな少女に殺させていいものかと苦悩しはじめる。一方で女子高生に扮して封筒を置いた女性は彼からの封筒を開けてみると、そこには交換殺人をやめるように書かれた。彼女は何のために交換殺人を行おうとしているのかを探っていくというお話。
 
交換殺人を起点として様々なことが起きるミステリー作品となります。
あらすじを読んだときは交換殺人をいかに行うかという話だと思ったのですが、内容としては交換殺人をきっかけに謎が発生してその真相を探っていくという流れになります。相手が殺害を指定された人は本当に悪人なのか、殺害を依頼してきた本当の理由は何なのか、といったことを追っていくことで、交換殺人を行う二人の心理描写が上手く描かれています。描写の質と量から見るに著者はこちらの方を重点的に書きたかったように読み取れました。
ミステリーとしてみるとメインである交換殺人の話はそこまで深く掘り下げていません。その代わりに上記のようにその周辺に色々な謎があるのでミステリーとしても楽しめる部分があります。自力で推理するほどの謎ではないと思うので物語を読んで楽しむ方が良いでしょう。
 
イメージしていた内容とは少し違いましたが、別の面白い面のある作品でしたので気になる方は読んでみてください。