花の本棚

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山田悠介 サブスクの子と呼ばれて

山田悠介 「サブスクの子と呼ばれて」
あらすじを読んで気になったので読んで見ました。

 



 
様々なサービスがサブスク化する中で人間のサブスクサービスが認められた。サブスクでは子供がサービスを提供するのは違法とされているが、需要と単価が高いことから裏では盛んに行われていた。主人公の少年が住む児童養護施設も運営資金難であるために子供たちにサブスクサービスをさせていた。あるとき死んだ妹として接してほしいと依頼された一人の子供が期間終了後になっても施設に帰らずそのまま行方不明になってしまった。その間に彼はあるグループの会長の屋敷にサブスクで呼ばれ、同じように呼ばれた子供たちと競争して勝った者をグループ後継者に指名するという争いをすることになる、というお話。
 
SF風の社会問題系ミステリー作品となります。
日本では人材に流動性がなく解雇しづらいのが問題なら、即日で人材を何度でも入れ替えられるサブスクになったらどういった社会になるかを描いています。前半はサブスク制度によって人々がどう生活が変わり、何が問題かを中心に描いていて、後半は主人公たちに起きた一連の騒動の真相を探っていくミステリー的な内容となっています。
子供たちがサブスクをどう考えているかは様々な点が見所で、それを利用して貧困からのし上がろうとする子や後ろ暗いことをさせられてトラウマになる子など制度のメリットとデメリットが上手く描かれていました。作中の描写を見ている限りだと人材サブスクはメリットよりもデメリットの方が大きそうです。割高な代わりに雇う側が絶対的に権力を持つ構図になるので人権的な問題は想像通りにあるという印象でした。 
 
作中に出てきた人材のサブスクが実際にあったらどうなるかを私も考えてみました。結論から言うと、需要があるのは犯罪紛いな仕事しかないと思っています。
作中のサブスク制度の設定のままとして考えた場合、サブスクの人材はいついなくなるか分からないのに料金が高いという端的に言うとハイリスクな人材になります。信頼を大事にする企業であればこういったハイリスクは許されないのがほとんどでしょう。なので作中に描いてあった人材の流動性という観点ではあまり効果はなさそうです。ではこのハイリスクを抱えてでも利益が取れる依頼は何があるかと考えると、やはり違法な手段で暴利を取る仕事しかありません。今の世の中だったら特殊詐欺の受け子とか過激な水商売など表では募集の掛けられない類の仕事になるでしょう。
ただ、作中に書いてあったように貧困層の人々が一発逆転する手段として使えるというのは賛同します。このあたりは現実でも水商売や暴力団員からのし上がるというパターンに別のアプローチが増えた感じになるでしょう。
 
初めて読む作家さんでしたが、とても楽しめたのでほかの作品も読んでみようかと思います。