村山由佳 「嘘 Love Lies」
あらすじが気になったので読んでみました。
主人公の男性はネグレクトな家庭で育ったが、中学生になりようやく親しい友人たちが出来た。あるときそのうちの一人の女子が不審者から暴行を受け、知り合いの暴力団の男に頼み犯人を見つけ出して痛めつけるつもりが誤って犯人を殺害してしまう。その件を期に彼らは罪悪感を持ちながら生き始め、二十年の月日が経ってもなお苦しみ続けていた。長く続く苦しみから彼らは抜け出すことが出来るのか?というお話。
支えあいをテーマにした物語系の作品です。
本作の見所はメインの人物たちの心理描写の上手さになります。あの時にああしていれば…と過去の行いを後悔しながら生きている姿の描写はリアルで惹き付けられるものがありました。
物語の進行の仕方は事件のことを一人で抱え込んで生きる男女と互いに苦しさを見せて支えあおうとする男女の2ペアに分かれて進んでいきます。自分だったらどちらの生き方を選ぶか、と想像しながら読むと面白いと思います。
作中にて傷ついた同級生を一生守っていこうと決意をしたが相手から拒まれるというシーンがありました。特に男性は女性に対して守りたい姿勢を見せることが多いですが、それを拒まれるのはかなりショックだと思います。人を守る上で一番重要なことはこの人に守ってもらいたいと相手に認めてもらうことだと私は考えています。
守ってもらうためにはまず自分の弱い部分を相手に見せる必要があり、相手をちゃんと選ばないとそこに付け入られます。最初は守ってもらえたけど段々と見返りを求められるようになってトラブルが起きる、という話は珍しくないので守られる側の選定が厳しくなるのは当然のことです。身も蓋もない言い方になりますが世の中の困難の9割はお金があれば解決するので、単に守るだけで満足するのであれば相手にお金を援助するのが早くて楽です。守りたいと申し出る人たちがやりたいのはお金で解決しない困難から守ることだと思うので、まずは信頼を勝ち取る行動をするべきだと私は考えています。
初めて読む作家さんでしたが、楽しめたので他の作品も読んでみようと思います。