花の本棚

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未須本有生 ミステリーは非日常とともに!

未須本有生 「ミステリーは非日常とともに!」
以前読んだ「天空の密室」が面白かったので未須本さんの別の作品を読んでみました。
 


ミステリー作家が豪華客船上にてファンとの交流会を開催することとなった。イベントとして客船特有のトリックをファンの前で披露することを依頼される。船に関する知識がまったくない彼はかつて航空機に関わっていて工学知識のある友人とともに参加してトリックを考えることにするというが前半のお話。
後半は主人公が買った古い車を修理してくれている業者に自動車にまつわる事件について友人の刑事が知識を借りに行くというお話。
 
工学系の知識を使ったミステリー作品となります。
上に書いた内容は前半部分であり、船にまつわる工学知識や客船の運行の仕方などによるトリックが書かれています。後半部分は自動車に関する工学知識にて犯人は車をどう使って事件を起こしていたのかを推理するというお話になります。
どちらの章も工学系の知識を使っているため読んでいるだけでためになり面白いです。「天空の密室」もそうでしたが技術に関する説明が非常に分かりやすいため、理系方面に詳しくない方でも理解やすいのではないかと思います。
なお自力で推理するには工学系に詳しくないとほぼ無理だと思うのでそちらに詳しい方以外は推理せず読んだ方が楽しめるでしょう。
 
作中の第二部に登場する車修理屋によると車離れが深刻なので不正な改造の依頼も引き受けざる負えない同業者もいるという話がありました。
〇〇離れという表現は色々なコンテンツで最近聞くようになりました。車離れに関しては単に現代人にお金がないだけともいわれていますが、私なりに別の方面から理由を考えてみました。
移動手段として考えたときに現在の他の交通機関と比べて自家用車の持つ利点はいくつかありますが、私が思う一番の利点はお金ではなく車内でマナーを気にしなくていいことです。喫煙、乗車姿勢、飲食など所有者が許せば何をしてもOKと言えます。他の交通機関では周囲の乗客を気にしてこれらは制限されるため、日頃からマナー順守を息苦しく感じる人には自家用車の方が好都合です。一方で私が知る限り、マナーを守る度合いはお金の余裕と比例します。ということはマナーに関する利点を得たい人はそんなにお金を持っていない傾向にあると言えるでしょう。
現代では車そのものも高い傾向にあり、その維持費も上昇しています。そうなると上記の属性の人の実情とマーケティングが嚙み合ってないので、車から離れてしまったのではないでしょうか。私から見ると自家用車の利点はどれも重要でないので買う気はまったく湧きません。
ちなみに高級車に関しては「持っているだけで周囲にマウントが取れる」という昔からの需要が今もあるので高級車離れはそれほど起きていないだろうと見ています。
 
工学的なミステリーという変わった作品ですので気になる方は読んでみてください。