花の本棚

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澤村伊智 邪教の子

澤村伊智「邪教の子」
澤村さんの作品で気になるものがあったので読んでみました。

 



 
あるニュータウン新興宗教に属する一家が引っ越してきた。その家の母親は住民を勧誘したり病気で歩くことのできない娘を利用して住民から寄付金を回収したりしていた。その子を不憫に思った女の子は先生や親に相談するが相手にしてもらえず、脱会屋という宗教から引きはがすことを引き受ける人物に依頼することを考える、というお話。
 
新興宗教をテーマにしたホラーミステリーとなります。
上に書いたあらすじが前半パートであり、後半では前半パートの真相とニュータウンの実態を明らかにしていくという構成になっています。前半部分に散りばめられている何か変だな?という点が後半に次々繋がっていくのが非常に上手くて面白い。
テーマである新興宗教についての描写も非常にリアルです。ジャンルがホラーなので狂気の部分にフォーカスが多く当たっており、作中通して不気味な雰囲気が漂っていました。
他にも新興宗教についての成り立ちや解説が色々と書かれていたため、読んでいてためになる部分がありました。
 
宗教にハマるとどうなるかの描写が作中に多くありました。お金を搾取されるなど悪い面は多々あるのですが、私としては一点だけ良い部分があると思っています。それは物事の判断を自分でしなくて良いということです。
判断自分でしないのはダメでしょと思うかもしれませんが、身内が亡くなるなど大きなショックによって生きるためにしないといけない判断が出来なくなってしまうことがあります。そういったときに教祖などの言葉に従うことで一時しのぎではありますが延命することが出来ます。実際のところ、宗教にハマる人は近いタイミングでショックな出来事があった方が非常に多そうです。
宗教というと印象がとても悪いですが、例えば若い社会人が仕事のプレッシャーで精神的にすり減った時に自己啓発セミナーにハマるのと流れは同じです。考えてみると教祖様や尊敬する○○さんの意見が正しい方を向いているとしたら妄信して生きた方が労力を使わずに良い行動とその結果が得られるのでお得ではあるのですよね。イメージとしては「夕飯何がいい?→なんでもいい」と答えておけば楽なのと同じ感覚だろうと私の中で落とし込みました。私は自分で行動を決めたい派なので理解はしますが共感は出来ないですね。
 
ホラーよりもミステリーとしての描写が面白いと思うので、ミステリー系が好きな方にお薦めです