花の本棚

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垣谷美雨 結婚相手は抽選で

垣谷美雨 「結婚相手は抽選で」
以前垣谷さんの作品を読んで楽しめたので別の作品を読んでみました。

 

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未婚率と少子化対策として政府は「抽選見合い結婚法」を制定した。対象年齢の独身の中から抽選で組み合わせを決め、不満な場合は拒否もできるが3回拒否するとペナルティが課せられるという仕組みであった。またとないチャンスと喜ぶ人、制度が始まる前に結婚を決めようとしたが失敗してしまった人、など参加者の境遇は様々であった。制度が始まり出会うことで各々が自身の結婚観を考え直していく、というお話。
 
もしもこういった制度が出来たら、というSF風の作品です。法律が無理やり制定されて、国民たちがそれぞれ考えるという流れは前に読んだ「七十歳死亡法案、可決」と同じでした。
未婚率や少子化については序盤だけしか登場せず、現代の結婚観について問いかけるのが本題のようでした。親の強い干渉、異性に対しての偏見、容姿や人間性の劣等感、などに悩む人たちの描写はなかなかにリアルでした。概要を読んだ時にイメージした内容とはだいぶ違うものでしたが、これはこれで楽しめました。
また話の雰囲気とラストシーンを見た限り、著者もこの施策が晩婚化と少子化対策に対して良いものだとは思っていなさそうだと読み取れました。私としても制定されるまでの流れは少々雑な印象を受けたのでそこまで深く受け取る必要はないのかなと思っていました。
 
もしこの「抽選見合い結婚法」が出来たら実際どうなのか?を考えてみました。とりあえずは作中の設定そのままとして考えたところ、結論から言うとメリットよりもデメリットの方が多い。
一番大きいデメリットは、参加者の大多数は嫌な目に会うだけという点です。参加者は対象年齢になるまでの人生のパートナーが得ていない人です。身もふたもない言い方をすると異性視点の魅力が低い人間しか集まりません。よって制度開始の序盤で希少な魅力ある人はいなくなり、残るは断られ続ける人とペナルティに怯えて逃げ回る人だけの制度になります。この構図は作中でも描かれていたので著者も気づいていらっしゃるようでしたね。
数少ないメリットとして「異性との出会いが少ない」という人に出会う機会を与えられるという点でしょう。ただ、晩婚や未婚などの主原因は出会いの少なさではないと思うのでこのメリットも目的に対して有益ではないでしょう。
 
現代の未婚率の高さの原因は何か?についても考えてみました。一番の原因は経済力だと思いますが、同じくらい大きいのは娯楽の充実だと私は考えています。
かつては娯楽も多くなかったので結婚して子育てするくらいしか社会人のプライベートの楽しみや生き甲斐になる事はありませんでした。現代ではネット上の娯楽などもあり独身であっても生活の中で娯楽を満喫できるようになっています。またメディアで流れてくる子育ての大変さや会社の先輩から聞かされる家庭の苦労話などによって、今持っている娯楽と将来の結婚を見比べて娯楽の方を選ぶ人が多くなったのでは、と私は考えています。
私としても結婚は自分の考える幸せな人生において必須ではないと考えています。結婚が良いのか悪いのかは人によって状況が違いすぎるのでハッキリと決めることは出来ませんが、自分の幸せに必要かどうかが判断の基準として良いのではないでしょうか。
 
「七十歳死亡法案、可決」に比べると雰囲気がかなり軽くなっているのでこちらから読んでみるのも良いと思います。