花の本棚

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倉知淳 豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件

倉知淳 「豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件」
タイトルが気になって買ってしまいました。倉知さんというと「星降り山荘の殺人」を読んだ方が多いのではないでしょうか。
 

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内容はコメディ調のミステリーを集めた短編集となっています。タイトルの事件はそのうちの一つで、「豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえ」と言われた男性が撲殺死体で発見されるが部屋に凶器はなく砕けた豆腐あるだけであった、というお話です。
短編集ですので深い内容ではありませんがミステリーとしては上手く出来ています。とはいえタイトルの章もですがコメディな章がほとんどなので真面目に推理して解くよりは軽い気持ちでサクッと読んだ方が良いです。
 
本作の章に一つ面白いものがありました。会社内の行動をAIが監視していて人事評価を自動化するというお話。面白いのはそのAIには遅刻やミスをしてもランダムで見逃してもらえる気まぐれ機能と隠し数値で贔屓機能がついているという物でした。贔屓されている主人公に嫌われると飛ばされてしまうのでみんなから腫物として扱われるというお話でこれが読んでいて面白かった。
私もAIについては勉強したことありますが人事評価に使うには向いてないだろうと思います。何をしたら評価するようにするかは管理する人間がAIに教えないといけないので、上司が評価するのとそれほど差は出ません。むしろAIに評価されない仕事を誰もやらなくなったり、評価される仕事を独り占めするといったことが起きて職場の空気は悪化するでしょう。専門家ではありませんので私的意見になりますが、コミュニケーションや情を伴って行う事柄にAIは使えないと思っています。上記の人事制度で言うのであればパワハラやセクハラの発見、処罰であればAIにやらせると無慈悲に遂行してくれるので良さそう。発言内容と言われた側の脈拍や表情などを分析して嫌がっているか検知すれば悪くない精度が出るような気がします。
 
手軽にミステリーを楽しみたい時にはおススメです。