花の本棚

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白井智之 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件

白井智之 「名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件」
2023本格ミステリベスト10の1位に選ばれた白井さんの作品ということで読んでみました。
 


主人公の探偵は助手の女性の活躍によって名声を高め、一躍有名人となっていた。あるとき彼女が宗教教団の調査に向かったまま連絡が取れなくなったため、彼は彼女を取り戻すために辺境にある教団の施設を訪れる。そこは入団することで損失した手足でさえも生えて元に戻る奇跡が起きると教え込まれた信者たちが共同生活をしていた。
施設に着くと同じく調査に来ていた仲間たちが次々と殺害されてしまう。どう見ても不審な死であるが奇跡があると信じている信者たちから見ると何も不思議でない出来事として認識されてしまっている、というお話。
 
宗教教団を題材にしたミステリー作品です。
本作の見所は推理の仕方にあります。通常の推理だけではなく教団で起きている奇跡や集団催眠がある前提で考える推理の二パターンがある点です。それがあるために発生した事件そのものは変化していないのに展開が急激に変わる描写が多くあって非常に面白いため、自分で推理する/しないどちらでも楽しめます。本格ミステリーの1位に選ばれるだけのことはありました。
推理部分以外でも宗教団体の教祖や幹部たちの心理描写は読んでいて面白い部分でした。どういったことを考えて信者に扇動したり事件を起こしたりするかがリアルに描かれていたのでこちらも見所になると思います。
 
推理ミステリーが好きな方は間違いなく楽しめる作品ですので、ぜひチェックしてみてください。