染井為人 「正義の申し子」
あらすじが面白そうだったので読んでみました。
Youtuberをしている男性が悪徳請求業者に電話をかけておちょくる実況配信をして人気を集めていた。現実では家族からも疎まれる引きこもりだが、自身を正義の申し子と称して嫌いな自分を打ち消そうとしていた。
一方でYoutuberにおちょくられる動画が世界に配信されたことに憤慨した悪徳請求業者の男性は相手のYoutuberを探し出そうとしていた、というお話
動画配信をテーマにしたエンターテイメント系の作品となっています。
今まで読んできた染井さんの作品は重めのテーマを扱っていることが多かったのですが、本作はYoutuberを主人公としているためか全体的に雰囲気が明るく楽しいものとなっています。特に難しいことを考える必要がないため、エンタメ系のドラマを見ているような感じで気軽にサクっと読めます。
本作では匿名で人を笑ったり攻撃したりすることについて取り上げている場面が多くありました。一昔前では「ネット上に自身の情報を出してはいけない」がネチケットとして浸透していましたが、今では逆転してしまっているが何だか不思議ではあります。
私は今の会社にてアンケートで意見を募ったことが何度もあるのですが、匿名アンケートでないとデータになるほど数が揃わない傾向にあります。逆に匿名にすると会議室で話を聞いた時の大人しさとは一転して強気かつ長い意見が山のように出てきます。去年あったアンケート収集では「匿名でアンケートを取り有望な意見があったらその人特定して詳しく聞いてほしい」という訳の分からない収集方法を依頼されたこともあるので、上記を感じているのは私だけではないようです。匿名の場でないと意見を言えない人の心理は分かりませんが、対面では何も言わないのにネット上だけ強気になる人を「指先だけの人」と私は呼んでいます。
軽い作品でありながら内容はしっかりしているので気軽に読みたいときにおススメです