花の本棚

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千田理緒 五色の殺人者

千田理緒 「五色の殺人者」
鮎川哲也賞を受賞した作品ということで読んでみました。

 

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高齢者介護施設にて殺人事件が発生した。現場から去る男性を目撃した5人の高齢者たちはそれぞれ男性の服の色を証言しているが、全員が違う色を証言している。その施設で働くミステリ好きの女性介護士は犯人の最有力候補の男性に思いを寄せる同僚から事件の解明を依頼される、というお話。
 
第30回鮎川哲也賞のミステリー作品です。
この賞は中長編ミステリの新人賞にあたるものなので知名度はまだないけど優れた作家さんを探すためにときどき読んでいます。
受賞作品なだけありミステリーとして非常に面白いです。提示された謎の真相までのロジック、解き明かし方どちらも質が高いです。一番の目玉である「なぜ目撃された服の色がみんな違うのか?」の真相を知ったときは感心してしまいました。一点気を付けたいのは、自力で推理して解こうとするには詳しい知識が必要な場面があります。解き明かすことを楽しみたい方はその点を考慮しておいた方が良いでしょう。
ストーリーに関してはかなりライトな雰囲気になっているので取っつきやすいです。深い一貫したテーマを持った作品というわけではないので手軽に読むことが出来ます。
 
ちょっとした閑話休題
皆さん本の帯に書いてある他の作家さんのコメントを気にしていますか?本作の帯には賞の審査員をした作家の方々の名前と称賛コメントが書いてありました。
私は本選びをするときにはそれらを特に見ていません。ですが感触が良くなかった作品にあたって帯に自分の苦手な作家さんの称賛コメントがあるのに気づくと「なるほど、だからかな」と納得することがあります。
 
今後の活躍にも期待したい作家さんでした。