花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

久坂部羊 介護士K

久坂部羊介護士K」
前から気になっていた作品を読んでみました。
 

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ある老人ホームで入居者が転落死する事故が発生した。施設で入居者への虐待があったのではと疑った記者が調査を始めたところ、一人の介護士が転落死に関与していると疑い始める。彼は事故当時にアリバイがあるとわかったが、彼への周囲の評判を聞くと疑いは深まるばかりであった。また彼自身も医師の話を聞いて高齢者に対しての考え方が次第に変わっていく。
転落事故は本当に彼が起こしたものなのかを探るというお話。
 
高齢者介護をテーマにした作品です。筆者が現役医師ということもあり非常にリアルな実情が書かれています。
苦しんでいる高齢者を死なせてあげることが必要なのでは?と作中では常に問いかけてきます。少子高齢化もあって介護の現場は非常に厳しい状況にある中で、生産性がない介護にマンパワーを割いている場合ではないのではという主張も書かれています。
高齢者介護をテーマにした作品はいくつか読んだことがありますが、この作品が一番現状を上手く描いているという印象です。どうするのが良いかについては最後まで結論付けられていなかったので、まだまだ検討の余地の多い領域なのだと思います。そういった意味ではいずれ誰にでもやってくる問題を考えるきっかけになります。
 
作中にて死にたいと言っている高齢者を死なせてあげるのが慈悲だ、という主張がありました。
それは余計なお世話だと私は思います。というのも死にたいと「言っているだけ」の人は本心で死にたがっているわけではないからです。本当に死にたい人だったら何かしらの死ぬ準備をしているはずです。言うだけでアクションをしていないのであれば、自分にとって本当に死んだら困る人以外は気にせずテキトーに流せばいい。その代わり、本当に死んでしまったときに後から後悔するのはナシです。そうなりそうなくらい思い入れのある相手に対してはちゃんと寄り添ってあげるべきです。
非常に残念なことですが、今の時代なら死にたいと思い準備していれば10分後には死ねます。私も自殺を考えたことありますが、その時はamazonで首つり用ロープを買い、自室のドアで首吊るための長さ調整と結びを作り、家族に向けての遺書を作り、さぁいつでも死ねるぞという状態にして日常生活を送っていました。死にたいと口にするのにここまでしろとは言いませんが、何もしてないなら「悩みがあるから聞いて欲しい」と死ぬ気がないことを素直に言うべきです
 
久坂部さんの作品はためになることが多く書かれているのでぜひ読んでみてください。