花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

神津凛子 ママ

神津凛子 「ママ」
前に読んだ「スイート・マイホーム」がよかったので別の作品も読んでみました。
 

f:id:flower_bookmark:20200223190729j:plain


主人公はシングルマザーの女性。夫が亡くなった後に産んだ娘を女手一つで育てていた。シングルマザーであることで受ける世間からの扱いと生活の苦しさから娘を不幸にしているのではと悩む日々であった。あるとき、目が覚めると暗い部屋に監禁されていた。自分を拉致した男には見覚えがなく、理由も話さないままであった。
娘との元の生活に果たして戻れるのか?というお話。
 
「オゾミス」と題されたホラー系の小説となります。読んでみると社会問題をホラーテイストに書いた作品、という印象でした。
シングルマザーをテーマにシングルマザーの実情をリアルに描いています。ニュースなどでもシングルマザーの話題はしばしば出てきますが、実際にはこんなことが起きているのか、と驚かされました。シングルマザーになってでも子を育てようとする母親がいる一方で子供を捨ててしまう母親もおり、その差は何なのかなどためになることが多く書かれていました。
帯を見るとホラー部分がメインに見えたのですが全体から見ると描写はそんなに多くないです。それでも「オゾミス」と題するだけあって内容はおぞましいものになっています。
 
作中にて子供をちゃんと育てられるかどうかは産んだ時に母親になれるかどうかだ、と書かれていました。
子供が産まれれば立場は母親に誰でもなりますが、そのときに心が母親になるか女性のままかで決まるとのこと。女性のままだった場合、産まれた後に今までと同じ女性の生活に戻ろうとするそうです。すると子供が足かせになるので「この子がいなければ」とか「邪魔だから捨てよう」という発想になるのかなと思いました。
両者の心の違いは具体的には掴めませんでしたが、頭の片隅に残しておきたい考え方でした。
 
作中にて何気ない一言で恨みを買ってしまうというシーンがありました。
これに関して私が社会人になってから思うことがあって、自分の言ったことに関して責任持たない人に遭遇することが非常に多く、特に就職氷河期世代の方にこの傾向が強い。最近よく見るのが人を煽るような発言をする人。煽るというのは「相手を怒らせて得をする」のが目的だと思っていたので、先輩にいっぱい得させてあげようと本気で怒ったら先輩がもの凄く落ち込んだことがありました。私が期待通りのことをしなかったのも問題ですが、そもそも攻撃されるのを予期してなかったようで随分と浅はかだなと思った覚えがあります。
私はお酒が入っていたとしても自分の言葉には責任を持つことにしています。私の言ったことが原因で殴られても殺されても文句は言いません。何か言って人から攻撃されるのが嫌だったら黙って端っこの方に隠れていればよいのです。
 
シングルマザーの問題は最近話題になっているので、一読してみる価値はあると思います。