花の本棚

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染井為人 正体

染井為人 「正体」
あらすじを読んで面白そうだったので読んでみました。初めて読む作家さんとなります。
 

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ある一家全員を殺害したことで死刑を言い渡された少年が脱獄して世間は騒然としていた。少年は身元を隠しながら人々の中に溶け込んでいた。周囲からはミステリアスで得たいが知れないとされているがその人柄と行動力から慕われ、大きな悩みを抱える人々に寄り添うこともあったことから脱獄犯と発覚した後も彼の味方になる人もいた。
少年は何のために各地を転々として逃げ回っているのか?というお話
 
ミステリー小説と思って買ってみましたが少々ジャンル分けが難しい作品でした。
少年の逃亡している動機を探るという意味ではミステリー系になりますが、それぞれの人たちの悩みは社会問題を表しているようにも見えます。介護施設や日雇い人夫、冤罪など様々なテーマが垣間見えます。どちらを期待して読むにしても面白い作品ではあります。注意することとしては逃亡している動機を推理して当てようとするのは推理材料になるような描写がないのでやめた方が良いです。
作品全体で「人に寄り添うこと」を描写している場面が多く出てきます。直接何かしてあげられなくても支えになれることが世の中には多いことを描いているように見えました。
 
人に聞いてもらうことの大事さはよく知っているのですが気になることが一つあって、聞いてもらった後に何もアクションせずまた同じことを話す人がよく分からない。
踏み出すのに躊躇しているときに聞いてもらうことで勇気が出て一歩進める、という意味で聞いてもらうことが大事だと私は思っています。それに対して聞いてもらうだけで何もしようとしない人は他人の時間奪ってまで何がしたいのだろう?といつも疑問に思う。愚痴は言うけど解決する気がないのが見えてしまうと途端に冷めてしまうので聞き役としてはまだまだ未熟だといつも思っています。
 
楽しめる作品でしたので他の作品も見てみようと思います。