花の本棚

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高野和明 幽霊人命救助隊

高野和明 「幽霊人命救助隊」

最近読書がすすんでないので、昔の書評をご紹介。書き方が下手くそだったので再編しています。

 

 

主人公含め男女4人が断崖の上で神様と称する老人と出会う。4人とも自殺しており、命を粗末にした罰として幽霊となって下界に戻り自殺志願者100人を救って来るよう命じられる。様々な事情で死ぬか生きるか苦悩する人々を救うというお話。

 

高野さんの作品の中でも好評価な作品で、これはSF小説となります。

登場する自殺志願者も様々で、鬱病患者や孤独な老人、幸の薄い女性、いじめと両親の離婚に悩む小学生まで幅広い。
自殺志願者が題材なので暗い話なのかと思いきや、ジョークが上手く盛り込まれていて面白い。絶望した人を救う話なので涙する感動的なシーンもある。ジョークで軽く引き込んでから絶望した人が登場するので暗さを感じにくく描かれている気がします。

本書の中で人は「人とのつながり」「心身の健康」「経済力」のうちのどれか一つ欠け、もう取り返せないと思い込むと絶望する、と語られています。
「思い込む」という部分がポイントで、実際の事実や周囲から見てどうかは基準に入っていないようです。本書を読んでいると、実はまわりの人たちはどんな姿でも生きてくれているだけでいいと思ってくれてますよ、というのが著者からのメッセージになっているようです。

この3つの中では、今の時代だと「人とのつながり」が一番無くなりやすい気がします。SNSなどで気軽につながれるようにはなりましたが、ここでいうつながりはそういう軽薄なものではなくて「自分のことを見捨てない人」ぐらいのレベルの間柄のことを言っています。一番該当しやすいのは家族になると思いますが、結婚率の低下および離婚率の上昇、高齢化など最近の社会問題を考えるとそれだけでは難しいケースも増えているように感じます。


現代人の抱える色々な苦しみを題材にしているので、何かに悩んだりしていたら是非読んでみてください。