花の本棚

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阿津川辰海 録音された誘拐

阿津川辰海 「録音された誘拐」
阿津川さんの新刊で面白そうな作品があったので買ってみました。
 


ある探偵事務所長が誘拐される事件が発生する。その日は彼の家族が集まってホームパーティーをしていたため、犯人からの接触を一族で待つ形となった。そのときちょうど探偵事務所助手の女性が彼の家を訪ねていて、彼女の持つ特異な聴力で依頼を解決してきたことから事件解決のために協力することとなる。その実力は本物で誘拐の瞬間を録音した音声を聞いただけで犯人の仕掛けたトリックを次々と見破っていくが、聴力以外にも何か秘密があるようであった。
誘拐犯は何者で、その目的は何なのかを探るというお話。
 
超能力的な要素の入ったミステリー作品となります。
ミステリーとしての質がとても高い作品です。話のあらゆるところに犯行のトリック、別の事件とのつながりなどへの伏線が用意されており、それらのつなぎ方が非常に上手いため面白い。個人的な一番の見所は誘拐されている所長と助手がどうやって犯人を推理していたか、という点でした。また中盤~終盤にかけて真相が分かるごとに展開がどんどん変わっていくので420ページほどの長さですが最後まで飽きずに楽しめます。
本作は推理できる謎の箇所がいくつもあります。いずれもよく読めば自力で推理できるものになってはいるのですが、全部やろうとすると大変なので推理したい方は対象をいくつかに絞るのがよいでしょう。
 
作中にて誘拐を請け負った人物がお金に興味がないといいつつ依頼人から依頼料を取っていることを指摘されるシーンがありました。それに対しての彼の主張は「金額を見せることで事の重大さを見せつけている」というものでした。
この考え方は全面的に同意できました。換算方法は色々ありますがお金という共通の物体に置き換えると認識が合いやすいのは間違いないです。社会人をやっていると数値化できなくて困る場面が割とあるので、何とかしてお金に換算できないかな?という発想は持っていると役に立つでしょう。
ちなみに私も同じようなことを過去にやったことがあります。それはパワハラをお金に換算するとどうなるか?というものでして、強引でありつつも結構な自信作なので紹介しましょう。
パワハラ」は攻撃する側の視点で言い換えると「相手を傷付けて気持ち良くなる行為」となります。こういった行為をさせてくれる似たようなサービスは「SM風俗 S向けコース」となります。私の会社の最寄り駅で調べたところ「SM風俗 S向けコース」の料金は1時間2万円でした。つまりパワハラ1時間は2万円の価値があり、年間2000時間労働しているとしたら年4000万円です。成人の生命保険の設定額で多いのは3000~5000万円なので、パワハラを1年受けたらおよそ命と等価になるので攻撃側を殺してもいいというのが私の結論です。
いかがでしょうか?こんな感じで金額化するとどれくらい重大なのかが見えて良いですよね。
 
私の好みに合う作品だったのでシリーズとして続くといいなと期待しています。
気になる方は是非読んでみてください。