花の本棚

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下村敦史 ガウディの遺言

下村敦史 「ガウディの遺言」
下村さんの新刊が出ていたので買ってみました。

 



 
主人公の女性は外出したまま帰ってこない父を探していると父の友人がサグラダファミリアの塔から吊るされて殺害されているのを発見してしまう。現場の状況からサグラダファミリアの建設作業に従事している人物が犯人と推測され、そこの石工である父が失踪したことから犯人だと決めつけられてしまう。犯人でないにしても事件と関りはあると判断した彼女は建設に関わっている人々を訪ねて手がかりを探り始める。調べてみるとガウディは設計図を使わないはずだが隠された設計図があり、父はそれを探しているという。未完のサグラダファミリアの設計図を巡った人々の陰謀を探る、というお話。
 
サグラダファミリアをテーマにしたミステリー作品となります。
急に完成予定が発表されたのにはこういったミステリーがあったのでは、と想像しながら読むと楽しめるかと思います。
ミステリーとしてみると非常に良く出来ています。舞台であるスペイン バルセロナの事情や習慣など舞台設定が上手く使われており、真相とのつなげ方が上手い。
また作中ではテーマであるサグラダファミリアの歴史や建設についての解説も多くあります。ミステリー要素には絡んでいないので脇道的な部分になりますが、読んでいて面白い。ただ結構なページ数が使われていることと語っている人物のキャラの影響で長いウンチクを聞かされている気分になってくるのでそこだけ気を付けましょう。
 
作中にて不器用な父親が見えない愛情を子供に注いでいる場面が何度かありました。物語であれば感動的なシーンとして描かれるので一見素晴らしいのですが、現実として考えると普通に見えるようにやれば良いんじゃないかと考えています。
現代では色々な情報が見える化されています。それらの裏には情報の要不要の選定、その上で要点を外さず伝える文章作りなど様々な努力が隠れています。こういった情報を見せるための努力を重ねている時代なのに、愛情など伝えるべき感情を分かるように伝えないのは当人の怠慢でしかありません。残念なことですが「不器用」で言い逃れできる時代はもうとっくに終わっています。
といった考えからこういった感情をわざわざ隠す人は怠け者だと認識しています。こういった思想になるのは私がドライだからなのかもしれませんね。
 
下村さんの作品は題材が面白いものが多いので、気になる方はぜひ読んでみてください。