花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

ヒキタクニオ 触法少女

ヒキタクニオ 「触法少女」

今回は本好きのコミュニティで見つけた一冊。



過去に母親に捨てられ施設で育った少女が主人公。その容姿と頭の良さ、生い立ちを利用してクラスメイトや教師を下僕にして生活していた。あるとき捨てられてから一度も会っていなかった母親の消息を知り会ってみると罪悪感を微塵にも持ち合わせておらず、13歳であれば法で処罰されないことを利用して殺害することを決意するというお話

触法少年」と「児童虐待」がテーマになってます。触法少年とは14歳未満の者による行為は罰しないという刑法を表す言葉です。テーマが暗いので作中ずっとダークな感じで進んでいきます。ですが「虐待する親の心理」や「育児放棄する親の心理」などはリアルに描かれていて謎の引き込み感があります。

育児放棄の心理の根本には「責任を持ちたくない」という考えがあるようです。そのため親は責任を持つ仕事=定職に就かないという図式になって、生活するために愛人をとっかえひっかえになる。この結果、育児放棄+貧困+親と愛人からの疎まれという苦が重なって地獄のような状況が出来上がることが多くなるとのこと。以前読んだ本でも「親になる資格がなくても子供は作れる」という話がありました。

作中で「殺意は憎しみとは別物であり、感情ではない」と書いていました。私もこれに同意見です。殺意を位置づけるとしたら「野心」などが同類のものになると思います。感情ではなくて行動の末の目標到達点というイメージが合う。

あと私個人の見解ですが、本作みたいな過酷な経験をして育った人というのは独特なオーラというか一種の強さが見えます。過酷に育ったからか、障害や周囲からの攻撃にさらされても「あのときのに比べたら大したことない」の一言で乗り切れてしまいます。それもあってか行動の選び方がネジ2,3個外れたような豪胆な傾向にある。行動起こすならせっかくだし派手にやる、という私の考え方もこれと似てる、かもしれない。

知らない作者の本でしたが、期待以上でした。暗い内容ですがお子さんが小さい方に読んでもらいたい一冊です。