花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

春口裕子 悪母

春口裕子 「悪母」
タイトルが気になって買ってみました。



主人公は一人娘を持つ母親。ママ友と一緒に幼稚園を下見しに行くこととなった。園を見学していると職員に呼び出され、入園を断られてしまう。その理由はかつて子供をいじめて家庭を崩壊させられたというかつて絶縁したママ友からの告発メールであった。このことを皮切りに子供が成長するにつれて行われる行事のたびに告発メールがちらつくようになる。ママ友の間にある悪意と複雑な心境を描いたお話です。

テーマはママ友のコミュニティです。一見仲の良い女性同士でどのような駆け引き、妬みがあるのかというのをリアルに書いています。
ミステリー小説なのかと思って購入したのですが、心理描写がメインでミステリーは少なめでした。
女性が読めば「こういうことあるなー」となり、男性が読めば「仲良いはずなのにこんな戦いをしているなんて・・・」となるのではないでしょうか。

ママ友のマウンティング合戦がこれほど過酷だとは私も知りませんでした。というのも「子どものお受験」や「夫の仕事の成功度合」など誤魔化しが効きづらくて自分の力だけでは上に行けない部分で優劣が決められてしまうからです。もちろん子供の手助けなどできることはありますが、主体になることが出来ないのでもどかしさやイライラは相当なものなのではないでしょうか。それに比べると男性のマウンティング合戦は自身で実力つけたり、嘘やハッタリで力を水増し出来るので幾分かマシに見えました。

こんなに面倒ならコミュニティに入らなければ良いのに、という意見はごもっともなんですが一人でいるのが不幸なことというのが今の風潮のようです。「一人だと生きていけない」ではなくて「一人だと周りから思われるのが苦痛」という感情が強いようです。つまりプライドの問題です。一人でいることは別段悪いことではないのだから堂々としていればいいのに、と私は思います。いい年して誰かが一緒じゃないと動けない、楽しめない、だと情けないです・・・。

これはぜひパパに読んでもらいたい一冊。お嫁さんが見えないところで苦しんでいるというのが少しは理解できるかと思います。ママ友と遊んでいるように見えてお嫁さんは常に戦っている、かもしれません。