花の本棚

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中村文則 悪意の手記

中村文則 「悪意の手記」

なぜ買ったのか忘れてしまった一冊。何が気になったんだっけ・・・


主人公の少年は80%の確率で死に至る難病にかかる。死に直面して生きているものすべてに憎しみを向けて余生を過ごすことを決めた矢先、奇跡的に病気が治り退院することとなる。憎悪していた生き続ける人間に自身が戻ってしまったことで生きる意味があるか分からなくなり、自殺しようとしたところを衝動で親友を殺害してしまう。殺人をしたことに罪悪感を感じずにそのまま生きることに生きがいを感じ、生き続けることを決意するというお話。

あらすじなどを書いてて改めて思う、今回の本はこれだと内容伝わらない気がする。180ページの短い内容なのであまり深く書くとネタバレになりまとめるの難しかった。

本書のテーマは「罪を犯した人間の再起は許されるのか」です。本書のなかでの見解は「取り返しのつかない罪をした人は何をしても許されることは決してない。それを背負って苦しみながら一生を生きる」というものでした。人権の問題から更生の重要さなども言われてはいますが、実際のところこの意見の方が現実的だと思います。
私は殺人などの犯罪は人間の行動を超えた行いなので、実行したらその時点で人間として扱われなくなるのが当然だと考えてます。

この一方で「どんなに罪深くても味方でいてくれる人がいれば救われる」とも本書では書かれています。少し前の話ですが高畑淳子が高畑容疑者に面会した時に「私はずっと母親だから」と言ったと会見で話していましたね。何が起きても味方でいてくれる存在というのはとても貴重で尊いものです。家族、友人、恋人などどの間柄の人物がそういった存在になるかは確約されていませんが、もしそんな人物に出会えたら世間の目などは放ってでも大切にするべきです。

読み物としてそんなに面白くなかったですが、社会問題に対しての一意見を記した本としては悪くないです。