花の本棚

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天童荒太 悼む人

天童荒太 「悼む人」

結構前に映画化した作品。

主人公は旅をする青年。人が亡くなった場所に行って「その人は誰に愛されて、愛していたでしょうか。どんなことをして誰に感謝されていましたか」と聞き、そのことを胸に祈りをささげて悼むことからネット上で「悼む人」と呼ばれている。
夫を殺した妻、かつて母に捨てられた記者、障害を持っていた息子を殺害された両親などが彼と出会い、その姿に心を動かされる、というお話。

これは好き嫌いがくっきり分かれる作品です。生きていた中で一瞬でも愛され感謝される瞬間があったなら、どんな悪人であってもそれを胸に悼みます、という考え方を持っている主人公に共感出来るかどうか。偽善に見えるならおそらく終始イライラすることになります。
終盤は主人公の母がメインです。死が迫っている中で何を思い、何を残すのかという話は感動的です。

亡くなった人を忘れないためにはどうすればいいか?ということが作中で常に問われます。死は覚えておくには負荷が大きすぎるため、防衛本能として忘れるように出来ているんだそうです。忘れられてしまう=いなくてもよい人という観念が強いので、関係の深い人たちは忘れないでほしいと盛大にお葬式をしたり、何回忌といった習慣があるのだと思います。そういう意味ではお葬式の習慣も完全無意味ではない。

こういう内容なので、どうしても自分が死んだらどれくらいの人が覚えててくれるかな?と考えてしまいます。愛されたり感謝されたりすることどれくらいしたっけ?とか深く考えるほど着地点が分からなくなりました・・・ので「自分の死んだあとのことは生きてる人たちに任せよう、なんとかなるだろう」に落ち着きました。
雑な書き方してしまいましたが、書いていくと超長くなりそうなので。

他にも愛とは?感謝とか?という部分も取り上げられているため終始暗い調子ではありません。
感動系なので映像を見たほうが感動しそうな気がします。
感動ものが好きな人なら、きっと良い本になると思います