花の本棚

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方丈貴恵 アミュレット・ホテル

方丈貴恵 「アミュレット・ホテル」
あらすじを読んで面白そうだったので買ってみました。

 



 
「アミュレットホテル」は警察の介入がなく、ルームサービスとして武器や偽造品の配送、遺体の火葬などのサービスも提供してくれるため犯罪者にとって楽園のような人気ホテルであった。その代わりこのホテルには「ホテルに損害を与えない」「ホテル敷地内で殺人および傷害事件を起こしてはならない」というルールがあり、破るとホテル探偵による独自捜査が行われ見つかった犯人は粛清される。ホテル探偵に見破られなければ警察に見つからずに人間を抹消できる点は魅力的であるため、犯罪者たちはホテル内で事件を起こしてしまう、というお話。
 
ミステリー短編集となります。
犯罪のプロたちが行う犯行を見抜くというプロ同士の戦いのような他のミステリー作品にはない雰囲気になっていて独特の面白さがあります。ホテルで起きた事件を各章で解決するというのが本作の流れになっており、どれも犯罪者が完全な私利私欲で起こしたものばかりで情は皆無のプロの仕事になっています。この独特の作風は珍しくて面白いので見所の一つになるでしょう。
また警察が一切介入しないという設定なので事件の真相を探る方法は少々独特なものとなっています。検死、現場検証などもすべてホテルスタッフがやるという具合なので、どこまで信用していいものかという点もミステリー部分になります。そのためもし自分で推理したいという方は疑わないといけない箇所が他のミステリー作品より広くなるというある意味推理し甲斐があるので挑戦してみても楽しめるかと思います。
 
作中の殺し屋が殺しの仕事の心得として「今やるべきことに集中し、その先に待ち受けることに何も期待してはいけない」と語っていました。目の前の障害を処理したら安全になる、とかその後どうするかなどを考えていては雑念となって仕事の成功率が下がるので、障害が出てこなくなるまで淡々と処理し続けろ、という心得だそうです。
シンプル過ぎる考え方ではありますが、この考え方は好きですし「その時点でのベスト」をひたすらやり続けるのは私もよくやります。まさかこんなところに私と殺し屋に共通点があるとは思いませんでした。このやり方が特に有効だと私が思うのは人間関係に関する問題です。ミステリー作品だと相手の心の内をすべて見透かすような探偵役が出てきますが、現実でそんなことは出来ません。であれば自分が認識した情報をもとに自分がベストだと判断した行動をし、その後生じた事については未来の自分に託してしまいましょう。
このやり方をすると私がどんな考えで行動するかを相手に強くぶつけることから、私のことを気に入っている人しか周りに残らなくなります。そのため「内心嫌いながらも都合よく他人を使う」が出来なくなるのでそれが仕事上必要な方にはお勧めしませんが、そうでない方は騙されたと思って一回やってみると良いでしょう。
 
珍しい設定のミステリー作品ですので気になる方はチェックしてみてください。