花の本棚

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荒木あかね ちぎれた鎖と光の切れ端

荒木あかね 「ちぎれた鎖と光の切れ端」
以前読んだ「此の世の果ての殺人」が面白かったので荒木さんの新しめの作品を読んでみました。
 


主人公の男性は友人たちと孤島にやってきた。彼はこの友人たちを殺害して自分の先輩の仇を討とうと計画していた。しかし到着した夜に友人の一人が舌を切り取られて殺害されてしまい、まだ何もしていない彼は動揺する。このままでは自身が用意した犯行声明によって事件の犯人にされてしまうため、犯人を捜索し始める。次々と友人が殺害される中で遺体の第一発見者が次に殺害されている共通点があると判明する、というお話
 
2部構成で書かれたミステリー作品となります。
上に書いたあらすじは第一部の話となっていて、第二部は第一部の後に起きた事件について書いています。この二つには重要なつながりがあるという設定なので順番通りに読みましょう。
本作の見所は第一部と二部で違う楽しみ方が出来る点です。
第一部はミステリーとしてよりも心理描写が上手くて面白いです。殺したいほど憎んでいた友人たちが実際に目の前で殺害されると生じるであろう、葛藤がリアルに描かれています。それによって序盤と終盤で主人公の心理がどう変わっていくか、という点が第一部の見所になるかと思います。
第二部はミステリーとして良く出来ています。第二部の事件の真相や第一部の事件とのつなげ方が上手くて面白いです。第二部の方は自力で推理も出来るようになっているのでミステリー物として楽しむのが良いでしょう。反面、第一部の方は捜査がちゃんと出来ていない点もあってミステリーとしてのみ見てしまうと雑な部分が多い印象でした。
このように二つの部で内容が違うので、全部で450ページもあるのですが最後まで飽きずに読める内容でした。
 
作中にて過去に犯罪の加害者はそれを理由にどんな仕打ちをされても文句は言えない、という考え方が何度か出てきました。
犯罪加害者に関する考えは他の作品でも「犯罪する方が悪い」と書いていて、その考えは今も変わっていません。なので今回は違う視点から考えてみました。それはどうやったら日本において犯罪加害者を救おうという気持ちが湧くか、という点を考えてみました。
おそらく最重要になるのは日本において犯罪者を生かしておく価値を付加することです。ものすごく雑に言うと犯罪者が生きていて良いことがないから日本ではこれほど犯罪者に対して攻撃をするのです。ドナーに臓器全提供など死ぬ前提の方法を除いて考えると、一番現実的なのは前科者雇用を広めるになりそうです。イメージとしては障害者雇用と同じで、前科者固有の雇用とすれば税率を変えたりも出来るので「前科者は通常の国民より3倍税金納める」といった制度にするという考えです。こうすれば少なくとも生活保護子育て支援など税金による補助を受けている人々からは感謝されるようになる、かもしれません。
考えてみて改めて分かったのですが、犯罪率の低い日本においては犯罪者が生きていてプラスになる方法は今のところ存在しません。少なくともこの先10年とかで状況が変わるとは思えないので、犯罪してしまったら犯罪率の高い国に移住するのが一番手っ取りでしょう。
 
本年はこれが最後の投稿になりそうです
今年もありがとうございました、来年も宜しくお願いします。