花の本棚

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月原渉 九龍城の殺人

月原渉 「九龍城の殺人」
月原さんの新刊が出ていたので買ってみました。

 



 
主人公の女性は裏組織を取り仕切る祖母に母の遺骨を届けるために香港に向かう。香港で知り合った同世代の女性2人と友人になるが、そのうちの一人が貧困のために自ら身売りをしてしまう。彼女を追いかけて「九龍城」という非合法に人身売買をする組織の施設に潜入し、祖母の名を借りて城の主と交渉しようとしたが城の長が浴室で殺害されているのを発見してしまう。
第一発見者である自分と友人の容疑を晴らすために事件の真相を探るというお話。
 
推理面を重視したミステリー作品となります。月原さんの館シリーズの続きなのかと思ったのですがこちらは別物でした。
ミステリーとして非常に良くできた作品でした。事件の犯人、犯行方法、動機を推理する手がかりとそれらのつながりが上手くできており、納得感も高い内容でした。自力で推理しようとする場合は物証だけでなく心理的な要因や時代背景なども考える必要があるため、奥が深くて楽しめると思います。それでいて推理すべき部分を描写によって限定してくれているので余計な部分に気を回さなくてよくなっているのも良い点です。
殺人事件の真相の他にも謎となっている部分が多くあり、事件以外のところにも驚きの展開があるので推理せずに読んでも楽しめる内容になっています。
また本作では部隊がかつての九龍城であるため香港の貧困から発生する問題についても描かれています。一昔前の話なのですが内容を見ると問題そのものは変わらず別の場所で発生しているのでは、という印象を受けました。このあたりも読んでいてためになる部分でした。
 
推理するのが好きな方にはおススメできる作品でした。気になる方は読んでみてください。