花の本棚

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まさきとしか レッドクローバー

まさきとしか 「レッドクローバー」
まさきさんの新刊が出ていたので読んでみました。

 



 
ヒ素を使用して大量殺人した男性が逮捕された。十年以上前に北海道にてヒ素によって家族が毒殺される事件があったこと、その事件で唯一の生き残りであり犯人だろうと目されたその家族の娘を事件後一度だけ見たことを主人公の記者は思い出す。逮捕された男性と面会するとそのかつての事件の娘が今どうしているかを気にしている様子であった。
一方で遡ること十数年前、少女が預けられた北海道の片田舎には邪悪な願いだけを叶えるという神社がありその村の人々は共謀してよそ者を消していると聞かされる、というお話。
 
邪悪な願望をテーマにしたミステリー作品となります。
口にするのは憚れるような邪悪な願望は誰しも考えたことがあるでしょうけど、それらとどのように向き合っていくかという心理描写がリアルに描かれていました。どういったきっかけで願望が行動に変わって取り返しのつかない事件を起こしてしまう、という流れは現代での衝動的な凶悪犯罪の起き方と似ているような感じがして生々しくも不気味な雰囲気が本作の見所になると思います。
また作中では自殺に追い込まれるほどのことをされたのならやり返して殺害するべきだ、という主張が描かれています。読んでみると去年起きた中学生の刺殺事件を意識して描かれているような印象でした。私個人としてはこの主張は全面的に賛同しているので読んでいて面白い部分でした。
 
作中にて自分の家族たちの言葉遣いが汚いことに呆れている場面がありました。相手がどういう言葉遣い/選びをするかはかなり意識して聞いています。中でも私が嫌悪するのは親しくなると言葉遣い/選びが汚くなる人たちです。
これを言うと「言葉遣いに気を使わないのは親密の証だ」と主張してくる方がいるのですが、自分にとって大事な人に汚い言葉を浴びせるというのがまったく理解できません。敬語を使えなどと言うつもりはもちろんありませんが、フランクに話すことと汚い言葉を使うことは完全に別だと認識しています。昔付き合いのあった友人がしょっちゅう煽ってくるような発言をしてきて問い詰めたことがあるのですが、「家族同然だと思っていたからつい煽ってしまった」と言われて衝撃を受けたことがありました。家で煽りあっている家族って想像がつかないのですがネグレクトな家庭の一種なのでしょうか?親しくなったときに言葉遣いが悪いようだと話し合いもしづらくなるのでパートナー選びなどには重要な要素になるのではないでしょうか。
ちなみに私は大事度合いが高い相手ほど言いたいことや思いが伝わるように言葉を選ぶようになり、一方で嫌いな相手と話すのは人生の無駄だと捉えているので1秒でも早く会話を終えるために1文字でも短い言葉を選びます。こうすると発言から大事さがすぐ見分けられるようになるので周囲からも分かりやすくて良いと思っています。
 
まさきさんの作品は面白いものが多いので、気になるようでしたらこちらもぜひ読んでみてください。