花の本棚

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薬丸岳 刑事弁護人

薬丸岳 「刑事弁護人」
薬丸さんの新刊が出ていたので買ってみました。

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主人公の女性弁護士は女性警察官が通っていたホストの男性を殺害した事件の加害者の弁護を担当することになった。同じ事務所の男性弁護士とあたることになったが、加害者自身が主張内容と警察から提示された証拠類の内容が悉く違っていた。そのことを追求すると自分たちに嘘の供述をしたことを認めた上に自分の言うことを信じないなら解任すると言われてしまう。彼女は何を隠そうとして嘘をついているのかを探り事件の真相を明らかにするというお話。
 
犯罪加害者の弁護をテーマにしたミステリー作品となります。
主役の二人の信条が「犯罪加害者の話を聞く味方は弁護士しかいない」と「罪を犯してなお嘘をついて刑を軽くしようとする者を弁護する意味はない」という対立した構図から始まっており、どうやって折り合い付けて二人で弁護していくのかは見ていて面白いです。二人の対立で描いていますがおそらくこれは犯罪加害者に対しての弁護士の理想と厳しい罰を願う世間の声の対立を表していて、薬丸さんはそれを問題視しているように私には読み取れました。
また上記以外にも本作では嘘をつくことについての意見が多く出てきます。それらを書くことで「苦しくても事実から目を背けてはいけない」と伝えたかったのかな、と私には見えました。
 
本作ではなぜ嘘をつくのかについてフォーカスが多く当たっていました。嘘が好きか嫌いかはそれほど重要ではなく、どういった物事において嘘を使おうとするかはその人の価値観が現れると私は考えています。
嘘をつく行為はストレスがかかるというのは周知のことであり、どうでもいいと思っている物事について嘘をつく人はいません。ということは事実そのままよりももっと得をしたいまたは損を抑えたいと考えていない限りは嘘をつかないはずです。なので何に対して嘘をつくかでその人が大事にしている物事が分かると言えます。お金の使い方で価値観が分かるというのはよく聞くように、嘘をつく場面からも価値観が見えると私は思っています。その人にとって重要な物だからこそ嘘を看破したら相手が感情的になるのも当然でしょう。
ちなみに私は嘘をついて得しようと思ったことはほとんどないです。今までの人生を振り返っても「嘘をついた方が良かった」という場面が一つもなく、正直に生きた方が楽しいというのが理由かなと思っています。
 
本作も良い作品でしたが、薬丸さんの作品は良いものが多いので気になる方はぜひ読んでみてください。