花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

千早茜 しろがねの葉

千早茜 「しろがねの葉」
2022下期の直木賞受賞作品を読んでみました。

 




時代は戦国末期、主人公の少女は生まれ故郷の村から脱走する最中で石見銀山の山師に拾われる。石見銀山は銀の採掘が盛んであったが山を守るために採掘をコントロールするのが山師の役目であった。本来坑道は男性のみ働く場所であったが、山師から鉱脈や山の知識を習得したことで目覚ましい働きを見せるようになる。その後石見銀山周辺の支配制度が変わったことで、山師の権限が衰退してしまった結果彼女から山師の後ろ盾が失われてしまう。また歳を重ねたことで同年代の男性にも体格で劣るようになったために思うように働けなくなってしまい、生きていく術を奪われる屈辱を感じ始める、というお話。
 
戦国末期を舞台にした物語となります。
ジャンル分けが難しいですが、社会問題系の作品を書いているように読み取れました。というのも舞台はかつての日本ですが描いている内容は現代の社会問題を模しているように私には見えました。男女のジェンダーの差、周囲に認められたいという承認欲求、急速に世が変わることで起きる価値観の変化への恐怖と寂しさ、など今の日本でも問題視されているコンテンツが描かれています。
本作の見所は心理描写の上手さにあります。この時代の人たちがそういったことを考えていたのかはもちろん分かりませんが、それを違和感なく綺麗に描いているところは凄い。上記の社会問題に対する描き方も時代が違うはずなのにまるでその時からあったかのように感じられるほど上手く描かれています。
 
受賞しただけあって良い作品でしたので、ぜひ読んでみてください。