花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす

エイミー・C・エドモンドソン 「恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす」
仕事で使うために読んだ書籍は上げないようにしているのですが、これは職種問わずためになりそうなので書評を書いてみます

 



 
近年注目となっている「心理的安全性」についてそれを提唱した本家の教授が書いた本(を翻訳したもの)。「心理的安全性」という言葉だけが独り歩きしているためか誤解が多く、解釈も人によってバラツキが出やすいのが現状となっている。本書では心理的安全性の定義や必要性について事例を交えて説明しています。誤解が多いと言われているのですから本家が書いたものを情報源とするのが一番正確でしょう、と考えてこれを買いました。

大項目は以下となります。
大項目:
心理的安全性とは
心理的安全性がもたらす効果
心理的安全性が低いために起きた事例
・どうやって心理的安全性を築くか
 
心理的安全性がどういったものなのか、どんな効果を狙っているのかが明確に書かれているため上記の誤解や解釈違いの差を埋める手助けになります。また従来の(?)不安やプレッシャーで発破をかける方法とどういった違いが出るのか、といった昔の職場で常識だったこととの比較も色々とされているのでこちらも見所になるかと思います。心理的安全性を高める施策も書いてはありますが、いずれも年単位で根気強く意識改革を続ける必要があります。なので成果や実感を急がずに地道に積み重ねていくのが良さそうです。
実は本書を読んでいたときに、私の会社の労働組合の集会でこの「心理的安全性」についての話し合いがありました。事前アンケートによるとどうやら所属部署によるスコアの落差が大きいという結果になったようで、その原因を探しているとのこと。本書には「心理的安全性はリーダー/マネージャーの影響が大きい」とあったので、マネージャーが原因だと指摘することが出来ました。
 
作中に出てきた事例の当事者の言葉で「何かを言って解雇されることはあるが、黙っていて解雇されることはない」というものが紹介されていました。これは心理的安全性を高めて防ぎたい「何もしない方が得」の例として一番ふさわしい言葉なのではないでしょうか。
これを見たときに一つ考えたことがありまして、日本の終身雇用は心理的安全性に一役買っていたのではないかと思いました。終身雇用は日本人が産んだ悪習として名高いものとなっています。しかし心理的安全性という視点で見るとどれだけ失敗しても、降格などはあるにしても解雇は絶対ないというのはセーフティネットとして価値があるような気がします。安全性と安心による怠惰は紙一重だと考えているので、その線引きを明確化できればいい制度として再注目されるなんて流れも出てくるかもしれませんね。
 
心理的安全性について学んでみたいという方はまず本書から読んでみるのが良いでしょう。